2014 Fiscal Year Annual Research Report
抗体医薬をめざした最先端ハイブリドーマテクノロジーの開発と応用
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24360339
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
冨田 昌弘 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20183494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安川 智之 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 准教授 (40361167)
水谷 文雄 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (80118603)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | B細胞 / 抗原発現細胞 / ハイブリドーマ / 立体構造特異的抗体 / 誘電泳動 / 細胞配列 / 免疫捕捉 / 細胞分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,ウェル数を25万個に増やしたマイクロウェルアレイ電極を作製し,誘電泳動による異種細胞ペアリングを行った.これまでに得られた初期細胞濃度,印加電圧強度,周波数の最適条件を用いると,約85%のミエローマ細胞をウェル内に1秒で誘導できた.さらに,異なる種類の細胞(K562細胞)をミエローマ細胞の捕捉されたウェル内に同効率で配置し縦方向にペアリングできた.この手法を用いると約70%のウェル内に異種細胞の縦方向配列アレイを約1分で形成できる.すなわち,17万個の異種細胞ペアを極めて迅速に形成できた.細胞の誘電泳動操作に利用した電極を電気パルス印加用に用いると,ウェル内に捕捉されたペア細胞を融合することができた.ウェル内の細胞ペアが水平方向に形成された場合には細胞融合が観測されないため,細胞膜の接触点が形成電場と垂直に配置される縦方向配置が効果的であることを示した.現在の細胞融合効率は23%であり,誘電泳動操作および電気パルス印加により,約3分で4万個のハイブリッド細胞を得ることができた.また,電極デバイスからハイブリッド細胞を回収することができた.さらに,誘電泳動によるミエローマ細胞-B細胞の複合体アレイを作製し電気パルス融合を行った.抗体固定化ウェルアレイ電極を用いて表面抗原発現細胞を免疫捕捉し,未発現細胞を負の誘電泳動により排除した.これにより,発現細胞のみを濃縮してウェル内に捕捉できることを示した.さらに,異種細胞の形成効率および電気パルス融合効率の向上のため,それぞれの細胞サイズに適応した2段ウェルアレイの作製および電場強度の大きい角への細胞集積型アレイの作製を行い,そのペアリング効率および融合効率の調査に着手した.それと並行して,DNA免疫後のB細胞を用いて一括融合実験を行い,Cell-ELISA法に基づく立体構造特異的モノクローナル抗体作製を示唆する結果を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロウェル数を増大させた25万個のマイクロウェルアレイ電極を作製し,本年度の当初予定通りに,ハイブリド細胞の形成とデバイス外への回収を可能にしたことが,「おおむね順調に進展している」と評価した最大の理由である.正の誘電泳動によるマイクロウェル内への細胞導入を利用して高効率な異種細胞ペアリングと電気パルス融合法の組み合わせにより,わずか3分で約4万個のハイブリッド細胞を得ることができた.誘電泳動による細胞の配列,異種細胞のペアリング,電気パルス印加による細胞融合および融合細胞の回収のハイブリッド細胞取得に必要な一連の操作の迅速性,捕捉率および融合率は,当初の達成予想を大幅に上回っている.さらに,正の誘電泳動を用いたマイクロウェル内への細胞誘導および負の誘電泳動を用いたウェル内からの除去を可能にしたため,この導入および除去操作において電極表面上に抗体を固定化することにより,免疫反応を利用した特定の表面抗原発現細胞をウェル内に濃縮捕捉することができた.また,本手法を用いBSAの立体構造を特異的に認識する抗体産生B細胞とミエローマ細胞の縦方向異種細胞ペアをマイクロウェルアレイ内に作製し,電気パルス融合法を適用してハイブリドーマの迅速で高効率な作製に着手できた.さらに,DNA免疫によって感作されたB細胞を抗原発現ミエローマ細胞によって一括選択し,両細胞を電気パルスによって選択融合を行い,多くのハイブリドーマの作製に成功した.そのハイブリドーマをCell-ELISA法に基づきスクリーニングを行ったところ,目的抗原の立体構造認識モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作出を示唆する結果を得ることができた.以上より,当初計画にある項目をほぼすべて遂行できているため,本研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
DNA免疫法によるマウスの免疫化によって作製した抗体産生B細胞の遺伝子組換え抗原発現ミエローマ細胞による選択法と誘電泳動による細胞操作法を組み合わせ,アレイ電極内での迅速な複合体形成,抗体産生細胞の選択,細胞融合の一連をデバイス内で行い,迅速および高効率に有用な抗体を産生するハイブリドーマを作製する技術を完成させる.これまでに,マイクロウェル内に形成させた異種細胞ペアを電気パルス法により融合させるためには,電気パルスにより形成される電場方向と平行に細胞ペアを作製することが必須であることを示した.すなわち,ウェル内において縦方向に配列した細胞ペアを作製する必要がある.これまで,ミエローマ細胞とB細胞のサイズの差が,正確に縦方向配列した異種細胞ペア形成の効率向上の阻害要因であった.そこで,2段階フォトリソグラフィーを利用して,下段にB細胞用の小さいウェル(直径8ミクロン),上段にミエローマ細胞用の大きいウェル(直径14ミクロン)で構成されたウェルアレイ電極の作製を行う.さらに,4細胞を収納可能なサイズの正方形ウェルアレイを作製し,角に集中する強電場を利用して正確な縦方向配列を達成する.この2種類の細胞ペアリング法を用いて融合効率を向上させる.これにより,DNA免疫によって感作されたB細胞とミエローマ細胞でウェル内に形成させた細胞ペアに直流矩形波の電気パルスを負荷して融合し,立体構造特異的モノクローナル抗体の高効率作製を行う.さらに,作製されたモノクローナル抗体の立体構造認識をプロテオリポソームを用いて,可視的に解析することを計画している.プロテオリポソームは,目的抗原を立体構造を保持した状態でリポソームに組み込むことができるため,その解析に適していると考えられる.これと並行して,立体構造認識モノクローナル抗体の生理作用についても細胞をターゲットとして解析を予定している.
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Causes of Carryover |
平成26年度にモノクローナル抗体の立体構造認識の解析を行い,学会発表する予定でいたが,解析手法を再検討する必要が生じたため,計画を変更し,平成27年度にその解析を行うこととしたため,未使用額が生じた.また,新規マイクロウェルアレイ電極の性能評価を行うため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
モノクローナル抗体の立体構造認識の解析と学会での発表を次年度に行うこととし,未使用額はその経費に充てることとしたい.さらに,電気パルス細胞融合の効率向上に有効な新規マイクロウェルアレイ電極を作製し,誘電泳動による細胞の配列,異種細胞のペアリング,電気パルス印加による細胞融合および融合細胞の回収のハイブリッド細胞取得に必要な一連の操作を遂行し,迅速性,捕捉率および融合率の向上を目指す.主に,電極の作製,使用する細胞の準備と培養に予算を使用する.
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Research Products
(75 results)