2013 Fiscal Year Annual Research Report
超高速衝突時に発生するイジェクタの衝突角度/温度依存性評価と国際標準化への対応
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24360351
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤星 保浩 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60222519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 政弘 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60282828)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 航空宇宙環境 / 微小宇宙ごみ / 超高速衝突 / 二段式軽ガス銃 |
Research Abstract |
宇宙ごみの増加割合を低減させるため、各国が対策を取りつつあるが必ずしも効果が上がっていない。そこで、国際標準化機構(ISO)を通じて抑制する動きがあり、ISO11227が平成24年9月15日に制定された。5年後に見直し時期を迎えるが、その際には日本が主導して同規格案を修正し、日本の宇宙開発の妨げにならないよう配慮しつつ、宇宙環境保全活動へ貢献するような規格案に改正することを目的とする。ISO11227の見直し時に、斜め衝突を標準試験の一つとして追加し、さらに温度依存性確認試験を追記できるようにする。 (1)昨年度斜め衝突におけるウィットネスプレートの大きさを規定し、今年度その条件下で実験を行い、その妥当性について検討した。大部分の破片をこのウィットネスプレートで受け取ることができること、ならびにウィットネスプレート中に貫通孔がないため衝突痕が垂直衝突に比べて5倍程度まで増えることが分かった。 (2)アルミニウム合金(6061-T6)の厚板に対し、アルミニウム球(2017-T4 φ 7.0 mm, 0.51 g)を衝突速度 2km/sで衝突させ、発生するイジェクタのサイズ分布を調べた。その際,ターゲットであるアルミニウム合金を高温(+200ºC)、室温(+20ºC)、低温(-60ºC)に設定し、発生した破片のサイズ分布を比較すると、小さい範囲(最大長さで2 mm以下、投影面積で 5 mm2)の分布傾向に大きな差異は見られなかったが、大きいサイズでは低温の方が多かった。衝突した際に生じるクレーターやリップの形状やX線CT像から差異がみられ、温度依存性をISO11227に取り入れるべく、改定案(温度に関する補足項)を考える必要があることがわかった。 以上の研究内容を、ISOの規格検討会議、ヨーロッパデブリ会議、衝撃波シンポジウム等に参加し、他研究者と意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
垂直衝突から斜め衝突実験に変更することで、ウィットネスプレートによるイジェクタの捕獲効率が大幅に向上することが分かった。この成果をもとに2014年度に東京で開催されるISO総会において日本からの提案として斜め衝突実験手順案を報告する予定である。また、温度依存性についてはアルミ合金の場合クレータ形状において差異があるものの、破片のサイズ分布には大きな差異はないことが実験的に確認された。今後はCFRPなどの他の宇宙材料にも検討範囲を広げることで、温度依存性を時期見直しに含めるかどうかを検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年5月26日から30日にISO/TC20/SC14の総会が東京で開催される予定である。この総会において昨年度の研究成果を報告し、斜め衝突試験の項目をISO11227に追加するよう提案する予定である。新規制定規格に対する初回の見直し時期が制定3年後から制定5年度に改正された。これを受け、実験結果を増やしより説得力があるデータをもとに関係国の代表者に斜め衝突の重要性を説いていく予定である。さらに、イジェクタ破片の簡易的な速度計測方法を検討し、また、他の宇宙材料における温度依存性実験を実施し、それらも5年度の見直し時期に同規格に追記できるよう準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
内径6mmの発射管(線条痕なし)から直径1mmのアルミ球を秒速5kmで発射するために、プラスチック製のカバー(サボ)を使用している。ところが、このサボとアルミ球とを飛翔中に分離する際の分離成功率は現在30%程度であり、超高速衝突実験の大きな律速となっている。特に、宇宙材料の一つである太陽電池クーポン試験片は1個当り数十万円掛かることからサボ分離の成功率の低さが問題となる。そこで、次年度に予算の一部を繰り越すことで、線条痕付きの発射管の導入を検討した。 宇宙科学研究所では既に線条痕付き発射管を導入しサボ分離成功率を7割程度以上に向上させているが、アメリカから購入しているため約300万円掛かっている。発射管は瞬間的に超高圧状態にさらされるので、交換部品となる。交換を前程するとあまり高額なものを導入する訳にはいかない。そこで、国内で線状痕付き発射管を製造できるメーカを見つけ出し、アメリカから購入した場合の半額程度の金額(150万円前後)で購入できないかを検討する。ちなみに、線条痕なしの発射管を国内で製造した場合は約50万円程度である。
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