2013 Fiscal Year Annual Research Report
酸素格子欠陥構造に基づく不定比性酸化物燃料の機構論的物性モデルの研究
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24360389
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小無 健司 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10250812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢板 毅 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主席 (40370481)
加藤 正人 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究主席 (20421753)
田中 知 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10114547)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 原子力材料・核燃料 / ラマン分光 / 酸化物 / 格子欠陥 / シンクロトロン放射光 |
Research Abstract |
本研究は原子間相互作用を微視的に捉えることが出来るラマン分光法、酸素格子欠陥の近傍電子状態を捉えることが出来る エックス線吸収微細構造(X-ray Absorption Fine Structure(XAFS))測定、第一原理計算による電子論的理論評価の3 手法を相補的に用いて酸化物燃料中の酸素格子欠陥の微視的描像を描くことを目的としている。 統計力学に基づいた解析により平衡状態での酸素ポテンシャルは、欠陥濃度が希薄な場合は、酸素格子欠陥生成エネルギーと欠陥同士の相互作用エネルギーを用いて表すことが出来る。格子欠陥の数が多くなると格子欠陥間の相互作用エネルギーが重要になってくる。 平成24年度は、プルトニウム酸化物の模擬物質としてセリウム酸化物を用いて不定比性とラマンスペクトルのピーク位置のシフトの関係を室温において調べた。この実験により試料の調整方法を確立した。 平成25年度には、装置を高温測定用に改良した。定比組成のセリウム酸化物試料は685℃以下の温度では、酸素対金属比(以下「O/M」という)が大きい相と小さい相の2相に分離する。そのため高温で不定比性の大きな(低O/M)酸化物燃料の構造を研究するために高温での測定が必要である。この装置を用いて、平成25年度は700℃に於いて不定比性とラマンスペクトルのピーク位置のシフトの関係を調べた。 その結果、セリウム酸化物の場合は、O/M=2付近の不定比性が小さい領域、即ち酸素の格子欠陥が希薄な場合は、点欠陥のみの効果を考慮すれば十分であるが、O/M=1.98付近になり酸素の格子欠陥が多くなるにつれて、格子欠陥同士の相互作用が重要になってくることが示された。これは上に示した第一原理計算を用いて解析した結果と同一の傾向であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セリウム酸化物の高温ラマン分光の結果、不定比性の増加に伴うピークシフト及びピークの分離がみられた。これは第一原理計算の予測と一致している。これまでセリウム酸化物のナノ粒子でのラマン分光ピークシフトは報告されていたが、バルク中の酸素格子欠陥によるデータは今回が最初の報告である。当初計画通り成果が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、ラマン分光実験と同じ条件でSPring-8放射光を用いたXAFS測定を計画している。XAFS測定では、原子間距離や原子の価数の情報が有られる。ラマン分光実験結果と合わせることによりセリウム酸化物中の酸素格子欠陥の構造を明らかに出来ると期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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