2013 Fiscal Year Annual Research Report
熱応答性イオン液体の相分離性発現因子の解明とそのウラン廃棄物処理への適用研究
Project/Area Number |
24360390
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
原田 雅幸 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助教 (60133120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 泰久 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 教授 (40323836)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ウラン汚染物 / イオン液体 / 熱応答性 / 抽出 / ウラニルイオン / 相分離 / ベタイン / 除染 |
Research Abstract |
本研究は、熱応答性イオン液体(IL)を用いたウラン汚染物の処理法を開発するための基盤データの取得を目的としているが、本年度は、初年度に続き、熱応答性ILである [Hbet][Tf2N](Hbet: 1-carboxy-N,N,N-trimethylmethanaminium hydroxide, Tf2N: bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)の相分離発現因子の解明とILと水の混合液の相分離現象を利用したウラニルイオン分離の基礎的試験を行った。 相分離の発現因子は、初年度水素結合の関与を提案したが、本年度のラマン発光及び近赤外吸収の分光学的知見から、Hbetの脱プロトン化による溶解ではなく、水素結合ネットワークの形成による水とイオン液体の混和によることを明らかにした。また、分子動力学シミュレーションから、体積で1:1の分相溶液が高温で一層になった時、圧倒的な量の水分子はクラスター化していることが示唆された。イオン液体分子間は近距離の構造化を保っているが、長距離の構造は失われていること、水分量が少ない場合でもイオン液体間の長距離の構造化が減少することが分かった。 この相分離現象を利用したウラニルイオンの分離は、初年度、高い硝酸濃度では全く抽出されないが、低い硝酸濃度の水溶液からは、抽出率が増加することを見出し、低酸性下でHbetのカルボキシル基のプロトンが解離し、それがウラニルイオンと錯形成することで抽出されると考察した。本年度、イオン液体にベタインを添加することによる抽出現象から、ウラニルイオンに対するベタインの錯体形成により、低酸濃度で約100 %の非常に高い抽出率(分配比1000以上)を実現し得ることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[Hbet][Tf2N]と水の混合系での熱応答相分離性の発現因子を解明するための試験において、本年度もラマン及び近赤外吸収に関する分光学的手法を使って、予想したように水素結合が相分離発現に関与することを示唆するデータを取得する等、順調に進んでいる。さらに、分子動力学的計算を行い、その分子構造についてイオン液体分子の相互関係と溶媒及び溶質となった水分子の存在状態について検討を行った。種々条件を変えた場合の分光学的データの取得も順調に行っている。また、錯形成分子を添加して、[Hbet][Tf2N]と水系におけるウラニルイオンの抽出分離試験も順調に行い、Hbetのカルボキシル基のウラニルイオンへの錯形成が関与していることを明らかにし、今後の相分離によるウラン分離研究の基礎データを取得することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に研究を進めており、研究計画の変更をすることなく、進めることで十分な成果が期待できると考えます。
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