Research Abstract |
従来のX線コンピュータ断層撮影(CT)においては,被検体の周囲360度に渡って約1000枚の透過撮影を行う.この撮影回数を少なくし,被曝量を低減するために,多変量解析CT測定を行う.これは,被検体中の既知の物質の有無を測定する方法であり,2方向から測定を行うことで,その物質の形状,位置を同定できる.平成23年度の段階で,1方向からの透過撮影についての多変量解析ができていた.平成24年度においては,2方向からの透過撮影を行い,その結果を多変量解析することで物質分布の画像化を目指した.用いたファントムは直径3cmのアクリルで,その中に直径5mmのヨウ素領域と直径2mmのアルミニウム棒を含む.ヨウ素の実効厚さはX線通過距離5mmに対し,15μmである.transXend検出器は,要素検出器として10x10x1mmのSi(Li)検出器を6式用いた.3番目と4番目の要素検出器の前に厚さ58μmおよび75μmの錫泊,ガドリニウム箔を設置した.得られた測定電流値の比を用いて,アクリル-ヨウ素,アクリル-アルミニウムの厚さ増加方向に関する2次元地図を作製した.これらが従来の応答関数に相当する.その後,ステップ0.4mmで,円柱アクリルファントムを0度方向,90度方向からスキャンした.各スキャン点におけるアクリル,ヨウ素,アルミニウム厚さを評価し,物質厚さ分布を得た.同じデータを用い,各スキャン点について,従来のtransXend検出器の解析法に従い,スペクトルサーベイ法により,4つのエネルギー領域に分けたX線イベント数を得た.X線イベント数の比に対する,アクリル-ヨウ素およびアクリル-アルミニウムの厚さ増加方向に関する2次元地図を求め,これから各スキャン点の物質厚さ分布も求めた.同じデータを用い,各スキャン点について,従来のtransXend検出器の解析法に従い,スペクトルサーベイ法により,4つのエネルギー領域に分けたX線イベント数を得た.X線イベント数の比に対する,アクリル-ヨウ素およびアクリル-アルミニウムの厚さ増加方向に関する2次元地図を求め,これから各スキャン点の物質厚さ分布も求めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2方向からの透過撮影を用いて,各方向から見える物質厚さ分布を得ることができた. また,物質厚さ分布を用いて断増画像を作成できた.さらに,研究申請時の電流値比で物質厚さ分布を求めるのみならず,各スキャン点において電流値をアンフォールディングすることで設定エネルギー範囲ごとのX線数を求め,このX線数比を用いて物質厚さ分布を求めたことは,研究の大きな進展である.将来,CT測定にも対応できる高計数率X線検出器が開発されたとき,本方法が有用となる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までは,円柱ファントムについて測定を行った.25年度には,人の形状に似た,複雑形状ファントムについて,測定を行う.また,高い空間分解能で測定するために,熱ルミネッセンスタイルを用い,多変量解析を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高い空間分解能で透過撮影を行うためには,transXend検出器の要素検出器を小さくすることが必要である.しかし,これまでのように各要素検出器からの出力を電流アンプを通して読み出すと,回路に多大な費用が掛かる.多変量解析CTにおいては,その場測定をすることは必ずしも必要ではないので,積分型検出器の利用が可能である.この候補としてイメージングプレートがあるが,読み出し装置が高価である.そこで,熱ルミネッセンスプレートを利用する.
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