2013 Fiscal Year Annual Research Report
酸素発生反応を安定化させる光化学系ΙΙ表在性タンパク質の構造・機能・進化
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24370025
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鞆 達也 東京理科大学, 理学部, 准教授 (60300886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 巧 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60241246)
三野 広幸 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70300902)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光合成 / 光化学系 / 酸素発生 / 表在性タンパク質 |
Research Abstract |
酸素は従属生物にとって必須の分子であり、光合成光化学系II複合体は水を分解し酸素を供給することに特徴を持つ。この反応は光化学系II表在性タンパク質によって安定化されており、表在性タンパク質が遊離すると酸素発生活性は劇的に減少する。また、表在性タンパク質はPsbOを除いて生物種ごとに多様性に富んでおり、シアノバクテリア以外では局在位置すら明らかになっていない。表在性タンパク質の機能・構造を解き明かすことが酸素の供給のみならず、光合成の進化の解明につながる。 本年度は、二次共生藻である珪藻・渦鞭毛藻等に特異的に存在する表在性タンパク質であるPsb31の結晶構造を報告した。このタンパク質は4本のヘリックスを持ち、単独で光化学系IIに結合しても酸素発生を回復することから表在性タンパク質の構造・機能・相関において重要な知見を与えた。また、Thermosynechococcus elongatus BP-1の光化学系IIに種々の組み合わせで表在性タンパク質を結合させ、光誘起差FT-IRの手法を用いて水分解中心であるMn4CaO5クラスターのS1→S2状態の遷移に関する寄与を調べたところ、PsbOとPsbVがタンパク質の二次構造に重要な影響を与えることを明らかにした。また、紅藻以降の二次共生生物に特異的に存在するPsbQ′タンパク質をPsbQ′を持たないシアノバクテリアに化学量論的に結合させることに成功した。この標品を用いて、閃光照射後の電荷再結合で観測される酸化側と還元側の変化が解析可能な熱発光の手法を用いて実験を行った結果、電子受容体QAの電位が正方向にシフトしている結論が得られた。これは、紅藻が新たに獲得したPsbQ′が過剰な光に対する電子伝達逆反応において保護作用として働いていると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸菌による、光化学系II表在性タンパク質の大量発現、および精製系を確立した。 珪藻に存在する光化学系II表在性タンパク質Psb31の構造を明らかにし、またPsbO, PsbV, PsbQ'機能を光差誘起差赤外分光法や熱発光、酸化還元滴定法等の種々の物理化学的測定によって明らかにした。 当初の研究計画に従って、さらなる追加実験を行っている。本研究により光化学系II酸素発生反応を安定化する、表在性タンパク質の機能・構造相関解明に繋がる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究分担者と物理化学的測定において引き続き協力をすすめ、生物の多様性を利用した光合成水分解系の解析を進める。また、当研究室で開発した、光化学系II表在性タンパク質の再構成手法により、光合成生物の酸素発生反応と環境応答を明らかにし、生物による環境の多様性の維持を科学的に明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画していた備品の購入を科学技術振興機構で得た追加予算で購入したため、未使用分が生じた。 本年度は、未使用分と併せて全額予算消化を行う。
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Research Products
(19 results)