2012 Fiscal Year Annual Research Report
成魚の雌雄生殖腺の性的可塑性の分子機構に関する研究
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24370028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
長濱 嘉孝 愛媛大学, 南予水産研究センター, 特定教員(教授) (50113428)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 雌雄異体魚 / メダカ / 成熟魚 / 性的可塑性 / 生殖幹細胞 / エストロゲン / 芳香化酵素阻害剤 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
これまで、受精時に決定した脊椎動物の性は生涯を通じて決して変わらないと考えられてきた(雌雄異体)。 ところが最近、研究代表者らは雌成熟魚(メダカ、テラピア)のエストロゲン量を低下させると、成熟雌は成熟雄へと性転換することを見出した。そこで本研究では、成魚の生殖腺(卵巣と精巣)に保持されていると考えられる性的可塑性の分子機構を主として形態学的研究手法を駆使して、細胞・遺伝子レベルではじめて明らかにすることを目指す。本研究の初年度である平成24年度はメダカの雌雄成熟魚を用いて、雄魚(XY)にはエストロゲン(E2)処理、雌魚(XX)にはエストロゲン合成阻害剤(芳香化酵素阻害剤、AI)処理を行い生殖腺の形態変化を調べた。3-60日間処理した後、E2やAIを含まない飼育水で120日まで育てた。E2-XY群では成熟精巣中に小型の卵母細胞が形成され、gsdfやsox9a2の発現が抑制された。また、精巣内周辺に存在する初期生殖細胞はE2処理により急速にmitosisを開始した。一方、AI群では15-30日処理群では卵母細胞の退行が起こり、60日処理群で機能的な精巣(精子の出現)が形成され、gsdfやsox9a2の発現は強く促進された。また、卵巣腔周辺に存在する初期生殖細胞でのmitosisはゆっくりと進行した。これらの結果から、メダカの成熟雌雄生殖腺における生殖幹細胞(GSC)の存在が示唆された。次に、成熟精巣でのGSCの存在をさらに明確にするために、パコール細胞分離法を用いて初期生殖細胞(GFR1a陽性)を単離した。これらの単離生殖細胞は幹細胞のマーカー遺伝子(oct4, nanog等)に陽性を示した。さらに、単離した生殖細胞をE2とともに細胞培養するとmitosisが促進され、前述した幹細胞マーカーの発現が減少した。以上の結果から、メダカの成熟精巣にはGSCが存在すると結論された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、成熟雌魚をAI処理した後の生殖腺における3種のエストロゲン受容体(ER)遺伝子の発現変動の解析を行なうことができなかった。しかし、当初計画していなかった成熟精巣からの初期生殖細胞の単離に成功するとともに、細胞培養条件下でE2の影響を解析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究の初年度に単離することができた生殖細胞(GSC)の詳細な特徴やE2との細胞培養の影響を細胞、遺伝子レベルで詳細に解析する必要がある。さらに、成熟精巣のE2処理で成熟卵巣への機能的性転換が起こらなかった原因を明らかにする必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費、人件費が4月に支払われる予定である。
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Research Products
(2 results)