2013 Fiscal Year Annual Research Report
膜蛋白質の多量体形成と動的相互作用を介した高浸透圧感知機構
Project/Area Number |
24370053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
舘林 和夫 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (50272498)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高浸透圧 / 膜蛋白質 / 酵母 / 多量体 / クロスリンク / センサー |
Research Abstract |
本研究は、細胞が物理化学的刺激である高浸透圧をいかに感知するか、その分子メカニズムを解明するため、酵母の複数の膜タンパク質の高浸透圧感知における機能を解析するものである。昨年度は、高浸透圧感知に関わる四回膜貫通蛋白質Sho1がTM2/3面をインターフェイスとした三量体形成面と、TM1/4面を別のインターフェイスとした二量体形成面をもつ、極めてユニークなホモ多量体構造をとることを生化学的解析により明らかにした。本年度はこのSho1多量体構造を、クロスリンク距離の異なる8種類のクロスリンカーを用いた化学クロスリンク法により詳細に解析し、特にTM2, 3の相対的位置関係を明らかにした、また、SHO1経路活性化条件において、Sho1多量体の構造変化が誘導されるかを調べた。SHO1経路に関わる膜タンパク質Hkr1, Msb2, Opy2の活性型変異タンパク質を過剰発現してもSho1多量体の顕著な構造変化は検出できなかった。一方、細胞に高浸透圧刺激を与えるとTM間のクロスリンク効率が上昇する部位が、TM1, 2, 4の3カ所で見つかった。この高浸透圧依存的なクロスリンク効率の上昇はHkr1 Msb2欠失株、Opy2変異株でSho1を発現させた場合も検出でき、他の膜タンパク質に依存せずに高浸透圧によってSho1多量体の構造変化が引き起こされる可能性が強く示唆される。現在、Hkr1, Msb2, Opy2全てが欠失した細胞やSHO1経路に関わる他のシグナル因子の欠失株を用いて、解析を行っている。以上より、本年度の研究では、Sho1多量体が高浸透圧に依存して自立的に構造を変化させる知見を得、Sho1が高浸透圧感知のセンサー機能に中心的な役割を果たす可能性を見いだすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、Sho1の多量体構造が高浸透圧により変化することを見いだした。昨年度Sho1多量体構造の変化を検出する方法を確立したが、これを用いて検出した高浸透圧依存的なSho1多量体構造の変化は、Sho1が高浸透圧センシングの中心的な役割を果たしていることを強く示唆し、次年度の研究でSho1経路の高浸透圧センシングの分子機構解明につながることが大いに期待される。したがって、本年度の研究達成度は、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
後は、高浸透圧依存的なSho1多量体構造の変化が、シグナル伝達といかにつながっているのかを明らかにするため、特に他の膜蛋白質や細胞内のシグナル因子との結合誘導の有無を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究で、Sho1多量体構造が高浸透圧によって変化するという、SHO1経路の高浸透圧感知の根幹に関わる知見を得たため、追加実験などにより一部計画に変更が生じた。 Sho1多量体と他因子との動的な相互作用の検討に加え、昨年度の研究により得られた研究結果に基づき、高浸透圧によりSho1の構造変化が引き起こされる機構を解析する必要性が生まれた。そこで後者の重要課題を遂行するために次年度使用額欄に該当する助成金を当て、前者の当初目的を遂行するため翌年度分として請求した研究費を使用する。
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