2014 Fiscal Year Annual Research Report
膜蛋白質の多量体形成と動的相互作用を介した高浸透圧感知機構
Project/Area Number |
24370053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
舘林 和夫 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (50272498)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 浸透圧 / センサー / 膜タンパク質 / 多量体 / MAPキナーゼ / HOG経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
高浸透圧に応答する酵母HOG MAPK経路の活性化には、Sho1、Hkr1、Opy2などの膜タンパク質群が必須であり、細胞内のMAPキナーゼカスケードの構成因子と協調的に高浸透圧適応に働くと考えられる。本研究では4回膜貫通タンパク質のSho1に焦点をあて、その多量体構造の解析、他の膜タンパク質や細胞内シグナル因子との結合性の解析を通して、高浸透圧感知の分子機構の解明を目指した。 クロスリンク法を用いた生化学的解析などからSho1はTM1/TM4面で二量体、TM2/3面で三量体を形成し、その繰り返しによって細胞膜上で平面格子状構造をとることを前年度までに明らかにした。今年度はこの多量体構造がHkr1やOpy2といった高浸透圧感知に関わる他の膜蛋白質との特異的な結合及び細胞内へのシグナル伝達に必要であり、Sho1が高浸透圧感知複合体の細胞膜上のプラットフォームとして働くことを見いだした。 またSho1はHkr1やOpy2など他の膜タンパク質に依存せずに高浸透圧に応答して構造変化をおこし、細胞内にシグナルを伝達する高浸透圧センサーとして働くことを見いだした。高浸透圧条件下、Sho1は構造変化を起こし、細胞内のシグナル伝達に関わるアダプタータンパク質Ste50と結合した。Sho1はPbs2 MAPKKと、Ste50は膜アンカーのOpy2及びSte11 MAPKKKと結合することから、高浸透圧によってひき起されるSho1の構造変化とSte50との結合誘導により、細胞膜上でMAPKKからMAPKKKへのシグナル伝達が可能になる。高浸透圧下でも構造変化が起こらない変異型Sho1ではSte50との結合誘導はおきず、HOG経路を活性化できないことから、Sho1は高浸透圧に応答して構造変化を起こしHOG経路を活性化させる浸透圧センサーであることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、Sho1がその多量体構造を介して、他の膜タンパク質Hkr1やOpy2と結合する詳細について明らかにすることができた。これに加え、高浸透圧に応答したSho1の構造変化が細胞内シグナル因子と結合し、細胞内シグナル伝達につながることを見いだしたことは、当初計画以上の収穫である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題によりSho1が高浸透圧に応答して構造変化をおこす浸透圧センサーであることが明らかになった。今後はこの構造変化が何によって(細胞膜の変化、細胞内外のイオン強度、膨圧など)ひきおこされるのか、Sho1の構造変化の詳細、構造変化によりSte50との結合誘導される機構を分子レベルで明らかにすべく、研究を発展させることが必要である。
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Causes of Carryover |
投稿した論文審査の進捗について出版社に問い合わせたところ、編集者と査読者の都合により通常よりも審査が遅延しているとの連絡があった。それに伴い当初予定より論文修正の開始が遅延することになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文別刷費、論文投稿費、論文修正のために行う実験に関わる試薬費に使用する。
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