2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24370061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
船津 高志 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00190124)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 1分子生理学・生化学 / 1分子イメージング / ナノ計測 |
Research Abstract |
細胞骨格の1つであるactinはG-actinが重合しF-actinを形成し、可逆な重合脱重合により細胞内運動などの細胞内の様々な機能に関わっている。本研究では、actinの重合過程を1分子レベルでリアルタイムイメージングすることにより、定常状態において重合がどのようなメカニズムで行われているのかを明らかにすることを目的とした。本年度の具体的な研究項目は以下のとおりである。 1. 1分子蛍光イメージングを行うためのナノスリットの幅の条件検討 ナノスリットの幅を様々に変えて、蛍光シグナルとノイズの比(S/N比)を評価した。BODIPY-FLラベルしたactinを用いてナノスリットの幅50~130 nmにおいてS/N比を算出した。幅を狭めることでS/N比が上昇することを確認した。1分子蛍光イメージングを行う際はS/N比が1番大きい幅50 nmのスリットを用いることにした。 2. ナノスリット基板上におけるactinの伸長 ナノスリット内においてactinが重合するか否かを確かめた。重合の核となるCy3 labelled F-actinをスリット内に固定させ、BODIPY-FL labelled actinを加えて重合を観察した。BODIPY-FL labelled actinの伸長を観察したところ、ナノスリット内で伸長するactinを観察でき、重合速度は0.16±0.01(μm/min)だった。一方、カバーガラス上での重合速度はナノスリットの場合の約3倍速かった。この原因として、基板上へのBODIPY-FL labelled actinの吸着により実効濃度が減少していること、ナノスリットの立体構造によりactinのBrown運動が妨げられてしまっていることなどが考えられる。 以上、actinの重合過程を1分子レベルでリアルタイムイメージングする準備が出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、まず、キネシンの化学反応と力学反応の同時測定を中心に研究を行った。その結果、Cy5-ATPがナノスリット基板へ非特異的に吸着する頻度が予想以上に多く、ナノスリット基板を用いて同時計測することが困難であることが分かった。そのため、FRETを用いて研究を行うことにした。具体的にはキネシン頭部にドナーCy3を結合させ、Cy5-ATPの結合をFRETによって検出する。また、キネシンのステップは量子ドットを結合させ、その位置をナノメートルの精度で測定する。個々の測定は出来ており、来年度は同時計測を目指す。 今年度は、もう一つの課題である、ナノスリット内でのactinの重合のリアルタイムイメージングに関しても研究を行った。その結果、1分子蛍光イメージングを行うためのナノスリットの幅の最適条件を決めることが出来た。この条件では、1分子のBODIPY-FL labelled actinを検出可能なS/N比を達成していることを確認した。また、ナノスリット基板上におけるactinの伸長を観察することに成功した。このように、来年度、actinの重合の1分子リアルタイム蛍光イメージングを行う準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、actinの重合のリアルタイムイメージングを中心に研究を行い、オリゴマーのアクチンが単位になって結合するメカニズム、あるいは1個のG-actinが重合すると他のG-actinが重合しやすくなる協同性によるメカニズムなどの検証を行う。 まず、ナノスリット内にCy3 labelled actinを固定し、その両端を観察領域と定め、領域内におけるBODIPY-FL labelled actinの蛍光強度変化を観察する。G-actinにKClを加えて重合過程にある条件と、F-actinを作製して十分に時間を置いて定常状態になった条件においてactinの重合をリアルタイムイメージングする。Actinが結合する際に観察領域の蛍光強度が上昇するので、この蛍光強度のヒストグラムを作製して結合したのが単量体か何量体かを明らかにする。これを、重合過程と定常状態で比較する。また、結合頻度によってP端とB端を区別し、P端とB端で結合するactinのモノマー、オリゴマーの比が異なるか検討する。以上の実験により、actinの重合メカニズムを明らかにする。 キネシンの化学反応と力学反応の同時測定については、Cy5-ATPのナノスリット基板への非特異的吸着が問題となったため、FRETを用いて研究を行う。具体的にはキネシン頭部にドナーCy3を結合させ、Cy5-ATPの結合をFRETによって検出する。キネシンのステップを観察するために量子ドットを結合させ、その位置をナノメートルの精度で測定する。両者を同時計測して化学・力学エネルギー変換のメカニズムを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の後半で、ナノスリット基板の表面を洗浄するためのプラズマ発生装置が不調になり修理を行った。長年使用しているため新しく購入する計画を進めている。慎重に機種を選定する必要があるため、約39万円を留保し、次年度にプラズマ発生装置を購入する予定である。 ナノスリット基板の表面を洗浄するためのプラズマ発生装置を新たに購入するための資金とする予定である。装置は200万円程度を予定しており、繰り越した約39万円を、その資金の一部としたい。
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