2013 Fiscal Year Annual Research Report
膜脂質の異常による小胞体ストレスとその感知メカニズム
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24370081
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
木俣 行雄 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (60263448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斉藤 美知子 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (40379558)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ストレス / 膜脂質 / 微生物 |
Research Abstract |
小胞体は分泌系蛋白質の折り畳みおよび膜脂質の生合成を行うオルガネラである。小胞体の機能不全は小胞体ストレスと総称され、真核生物細胞では小胞体の機能不全に応じて小胞体タンパク質の発現が転写レベルで誘導される。これが小胞体ストレス応答である。小胞体ストレス応答を司る主要因子として、小胞体膜貫通タンパク質Ire1が同定されている。本研究を始める前段階の研究の成果として、Ire1が構造異常タンパク質とダイレクトに会合すること、および、その会合によりIre1は小胞体ストレス応答を惹起すべく活性化することが明らかとなっている。一方、膜脂質の恒常性破綻も小胞体ストレスとしてIre1を活性化するが、その場合のIre1活性化メカニズムは不明である。本研究では、膜脂質の異常によるIre1活性化メカニズム解明を目的とし、当該年度においては、出芽酵母を用いた解析を進めてきた。なお、構造異常タンパク質との会合能を失ったIre1変異体は、構造異常タンパク質蓄積による活性化に不全を来すが、膜脂質の恒常性破綻によっては野生型Ire1と同程度に活性化する。これによって、Ire1を活性化する特定のストレスが、構造異常タンパク質の蓄積によるものなのか、あるいは膜脂質の恒常性破綻によるものなのかを識別することができる。そして、当該年度におては、EUROSCARFから入手した出芽酵母遺伝子欠損ライブラリーから得た幅広い種類の遺伝子欠損株を用い、「どのような遺伝子の欠損が(どのような細胞障害が)膜脂質の恒常性破綻を通じてIre1を活性化するのか」明確にすることを試みた。その結果、GPIアンカーの形成不全を有力視できるデータを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究内容の実績」の覧で記したように、出芽酵母網羅的遺伝子欠損ライブラリーを用いた解析によって、どのような異常が膜脂質の恒常性破綻としてIre1に認識されてIre1を活性化するのか、その具体像にアプローチすることが出来ている。さらには、生化学的解析を見据え、Ire1小胞体内腔ドメインタンパク質を大腸菌にて大量発現させ、また、高純度で精製することにも成功している。しかし一方で、膜脂質の恒常性破綻時にIre1に結合するタンパク質をアフニティー精製による共精製法によって取得しようという試みは、まだ完了しておらず、次年度の進展が期待される。また、動物細胞を用いた研究が、研究協力者の異動などのため、まだスタートできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に大腸菌で発現・精製に成功したIre1小胞体内腔ドメインタンパク質を利用し、種々のin vitro実験が可能であると期待している。例えば、Ire1の小胞体内腔ドメインが、GPIアンカーを含む膜脂質とダイレクトに相互作用するかどうか、脂質アレイなどを用いて検討したい。また、当該年度に検討を進めた「膜脂質の恒常性が破綻する」条件において、細胞内でIre1に会合するタンパク質を、アフニティー精製による共精製法および質量スペクトル解析を組み合わせることにより同定し、そのタンパク質をコードする遺伝子の改変による表現型をチェックするというアプローチも継続する計画である。さらには、「構造異常タンパク質の蓄積では活性化するが膜脂質の恒常性破綻では活性化しない」Ire1変異体が得られれば、研究の有力なツールになると期待されるので、Ire1遺伝子を低正確性PCRに供することにより、そのうような変異体の取得を目指したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた動物細胞や動物個体を用いた解析をスタートできていないので、そのために計画していた物品費に余剰が生じた。 出芽酵母網羅的解析やin vitro解析など、多額の消耗品が必要な解析のための物品費として有効利用する計画である。
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Research Products
(9 results)