2013 Fiscal Year Annual Research Report
生殖細胞の減数分裂誘導とクロマチン構造転換の制御ネットワーク
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24370089
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中馬 新一郎 京都大学, 再生医科学研究所, 准教授 (20378889)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 発生 / 生殖 / 減数分裂 / クロマチン / シグナル伝達 |
Research Abstract |
生殖細胞ゲノムの安定な保持と伝達は個体、種の継続に重要であると共に減数分裂による相同遺伝子組換えと1倍体化によって遺伝情報の多様性が生まれる。減数分裂の制御機構の研究は主に酵母等の単細胞生物を用いて行われる一方、多細胞生物においてその分子基盤の解明は進んでいない。本研究では生殖幹細胞から減数分裂移行を制御する分子プログラム及び減数分裂期核のクロマチン動態の解析を進める事を目的とする。これまでに生殖幹細胞のヒストン修飾、RNA pol II、RAR等のChIP-seq解析を進め、生殖幹細胞株とES細胞株の比較によりオープンなクロマチン修飾が両者で類似していること、生殖幹細胞株のH3トリメチル化のbivalent修飾はES細胞と同様に初期発生過程で働く遺伝子群が占めること、RARは生殖幹細胞、ES細胞でターゲット遺伝子が異なり生殖幹細胞では減数分裂で機能する遺伝子群に結合すること等が明らかとなった。本年度は減数分裂誘導に伴いRNA発現 やエピゲノム修飾が変化する遺伝子群をクラスタリングし、シスエレメントのde novoモチーフ抽出を行い複数の機能候補因子を同定すると共に幾つかの候補遺伝子群について誘導性レンチウィルスベクターを用いたcDNA、shRNAの発現ベクターを構築して生殖幹細胞株へのtransductionと機能スクリーニングを進めた。その結果、幾つか興味深い候補遺伝子群を得る事が出来た為、次年度引き続き詳細な解析を進める計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らはマウス生殖幹細胞(GS細胞)株が第1減数分裂前期に同調して移行する培養実験条件を作出した。本研究計画では同実験系を主な研究材料として生殖幹細胞から減数分裂移行を制御する分子メカニズム及び生殖幹細胞の体細胞型増殖から減数分裂移行に伴う核内動態の制御の研究を行う事を目的とする。これまでにマウス生殖幹細胞株はGDNF、bFGFのシグナル存在下で体細胞型分裂周期による増殖を行うが両シグナルが生殖幹細胞株の減数分裂移行を抑制する事を見い出し、更に両因子の減数分裂抑制はレチノイン酸シグナルによって上位に抑制される事を明らかにした。この減数分裂の誘導過程はアポトーシスインヒビターの選択的使用もしくは誘導性shRNAレンチウィルスベクターを用いた特定のアポトーシス遺伝子の抑制により観察可能となった。これらの結果を基に生殖幹細胞株の増殖分化転換の転写制御とエピゲノム制御について発現アレイ解析やChIP-seq解析により網羅的データを得ると共にin silico解析と合わせて機能候補遺伝子群のcDNA発現、shRNAレンチウィルスベクターのライブラリを作成し現在表現型解析を進めている。既に興味深い結果を示す遺伝子/経路の候補が得られて居る事から研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究成果を発展して機能候補遺伝子群のgain-of-function、loss-of-functionスクリーニングを行い、生殖幹細胞の体細胞型増殖から減数分裂移行を制御する分子メカニズムを明らかにする。特に減数分裂を特徴付ける最も初期の核動態の1つであるpre meiotic S期の開始に焦点を置き、体細胞分裂で共通する制御機構と減数分裂に特異的な分子経路が協調して働くクロストークを解明する。シグナル伝達分子と転写因子ネットワークについてアゴニスト、アンタゴニスト、上述の遺伝機能獲得、RNA干渉実験等により各遺伝子の活性と表現型の有無、相互作用、上下関係他を調べ、減数分裂の表現型検出には相同染色体対合を示すシナプトネマル複合体と組換え複合体の形成、未分化性維持は生殖幹細胞マーカーの消長、またFACSによる細胞周期解析、電子顕微鏡観察による微細構造観察等を指標にする。生殖幹細胞株の特徴の一つに生体精巣への細胞移植によって体細胞型増殖、減数分裂を経て受精可能かつ個体発生に寄与する成熟配偶子を形成する点が挙げられる。得られた機能候補分子について生殖幹細胞株の精巣移植法を用いて生体における遺伝子機能獲得、抑制実験を行い、また雄生殖細胞in vivo遺伝子導入系を併用する事で生理機能を調べる。これら解析により機能の有無を検証した分子群の内、減数分裂の初期プロセスの制御に関する遺伝学的表現型が未知のものについて、遺伝子改変マウス収集や作出等により生理機能/遺伝学的機能を実証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は研究計画の進展に伴い物品費が相対的に安価な実験計画に集中した為 本年度は前年度の研究成果に基づき研究計画の内で比較的高額な試薬を要する実験を集中して進める
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[Journal Article] Tudor domain containing 12 (TDRD12) is essential for secondary PIWI interacting RNA biogenesis in mice2013
Author(s)
Pandey RR, Tokuzawa Y, Yang Z, Hayashi E, Ichisaka T, Kajita S, Asano Y, Kunieda T, Sachidanandam R, Chuma S, Yamanaka S, Pillai RS
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A
Volume: 110
Pages: 16492-7
Peer Reviewed
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[Journal Article] The nuage mediates retrotransposon silencing in mouse primordial ovarian follicles2013
Author(s)
Lim AK, Lorthongpanich C, Chew TG, Tan CW, Shue YT, Balu S, Gounko N, Kuramochi-Miyagawa S, Matzuk MM, Chuma S, Messerschmidt DM, Solter D, Knowles BB
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Journal Title
Development
Volume: 140
Pages: 3819-25
Peer Reviewed
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[Journal Article] GPAT2, a Mitochondrial Acyltransferase, in piRNA Biogenesis in Germline Stem Cells2013
Author(s)
Shiromoto Y, Kuramochi-Miyagawa S, Daiba A, Chuma S, Katanaya A, Katsumata A, Nishimura K, Ohtaka M, Nakanishi M, Nakamura T, Yoshinaga K, Asada N, Nakamura S, Yasunaga T, Kojima-Kita K, Itou D, Kimura T, Nakano T
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Journal Title
RNA
Volume: 19
Pages: 803-10
Peer Reviewed