2013 Fiscal Year Annual Research Report
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24370090
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
影山 裕二 神戸大学, 遺伝子実験センター, 准教授 (90335480)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 遺伝学 / 発生生物学 / マイクロペプチド / 細胞増殖 / 形態形成 |
Research Abstract |
真核生物のゲノムには、極端に短いペプチド(30アミノ酸以下)をコードする遺伝子が数多く存在しており、このような短いペプチドをマイクロペプチドと呼ぶ。マイクロペプチドは、比較的高分子の前駆体が細胞内プロセシングを受けて成熟型のペプチドとなる従来のペプチド性分泌因子とは異なり、分子内に分泌シグナルの配列を含まず、細胞内で機能することから、新たなタイプの生体活性物質であると考えられているが、その作用機作の詳細については全くわかっていない。 ショウジョウバエpolished rice(pri)遺伝子は、数少生理活性が同定された数少ないマイクロペプチドの一つをコードしており、幼虫表皮の細胞突起形成や、上皮細胞の増殖など、発生現象に深く関与していることがわかっている。pri遺伝子には、12アミノ酸からなるORFが3つ、32アミノ酸からなるORFが一つ存在するが、これら4つのORFは互いによく似たペプチドをコードしており、遺伝子活性同様の遺伝子活性を示す。また、pri遺伝子の変異体では、幼虫表皮の細胞構造(トリコーム)が完全に欠損する。また、我々は前年度までに、priの過剰発現が成虫原基(将来成虫の表皮となる)の過剰増殖を引き起こすことを見出している。本研究では、マイクロペプチドのモデル系としてPRIペプチドに焦点を当て、マイクロペプチドの作用機構を、分子生物学的・細胞学的な手法を用いて解析することにより、マイクロペプチドによる発生制御機能の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究成果は以下の通りである。 a)pri遺伝子の機能獲得表現型を指標に、染色体欠失系統を用いた網羅的なスクリーニングを行い、ショウジョウバエ第2染色体および第3染色体上に、それぞれ約20の相互作用領域を同定した。上記の領域を対象としたcandidate approachによる相互作用遺伝子の同定を試みたところ、現在までに3個の遺伝子がpriと特異的に相互作用していることが明らかとなった。 b)上記の機能獲得型表現型を指標とした遺伝学的相互作用の解析により、細胞増殖に関わる因子がpriの機能発現に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 c) コンピュータプログラムにより、ショウジョウバエゲノム上に存在するORFをピックアップし、それぞれの系統とき保存度を評価して、ごく短いペプチドをコードする可能性の高いものから昇順に並べたリストを作成した。 d)PRIペプチドをHAおよびFLAGタグとの融合ペプチドとして過剰発現する培養細胞株を樹立し、それぞれのタグに対する特異抗体を用いてPRI結合タンパク質を粗精製し、質量分析計を用いて結合タンパク質の同定を試みたが、培養細胞における融合ペプチドの発現量は極めて低く、再現性のある結果は得られなかった。 当初設定された目標のうち、priと遺伝学的に作用する遺伝子の同定は終了する見通しが付いており、現在までに4個の候補遺伝子が同定されており、個々の遺伝子産物との物理学的相互作用についても現在検討中である。他のペプチド遺伝子の同定についても、コンピュータによるリストアップはほぼ修了している。これらの成果から、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの成果をもとに、以下の研究を行う。 a)pri遺伝子の機能獲得表現型を指標に、相互作用する遺伝子の遺伝学的スクリーニングをさらに推し進め、単一の遺伝子の同定を出来るだけ多く同定する。相互査証を示す約40のゲノム領域のうち、現在解析の終わっていない領域が約20あり、これらの領域について、RNAIや既存の突然変異系統などを用いて解析を進め、出来るだけ多くの候補遺伝子を得るよう努力する。 b)機能格闘型表現型を指標に同定された遺伝子を対象に、pri遺伝子の機能欠失型表現型を指標とした遺伝学的解析を行い、pri遺伝子との遺伝学的相互作用を明らかにする。解析の際には、より強い相互作用が見られるものを、形態異常の度合いによって評価する。 c)得られた相互作用遺伝子について、突然変異系統が知られていないもの(RNAI系統のみが知られているもの)に関してはこれを作成する。既に突然変異系統が知られているものと合わせ、上皮細胞の形態形成や細胞増殖について表現型が見られるかどうかを検討する。表現型が見られたものに関しては、過剰発現系統を作成し、priの機能獲得型変異や機能欠失変異との相互作用を解析し、より相互作用が強いものを選別する。 d)上記の解析で絞り込んだ遺伝子について、PRIペプチドとの細胞内共局在解析や、遺伝子組換えタンパク質を用いたPRIペプチドとの試験管内結合解析等を行い、物理的相互作用を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度までに行った研究のうち、PRIペプチドとの物理的相互作用する因子の同定については、実験の条件設定について技術的困難が明らかになったため、遺伝学的相互作用を検討したうえで、次年度以降に実施することとした。したがって、これに供する予定であった実験試薬等を次年度に合わせて申請し、研究を遂行する。 使用計画は以下の通りとする。 分子生物学用試薬(371,799円)、抗体および細胞生物学用試薬(100,000円)、プラスチック製品(100,000円)、ショウジョウバエ飼育用品(100,000円)人件費・謝金(500,000円)
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Research Products
(7 results)