2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24370093
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 公綱 東京大学, 農学生命科学研究科, 名誉教授 (00134502)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横堀 伸一 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (40291702)
鈴木 勉 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20292782)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 動物ミトコンドリア / 非普遍暗号 / コドン / アンチコドン / tRNA / ウォブル位 / 修飾塩基 / 遺伝暗号 |
Research Abstract |
本研究はすべての動物門の各動物のミトコンドリアtRNAについて、各コドンを解読するtRNAのアンチコドンを網羅的に解析することにより、動物ミトコンドリアの解読メカニズムを解明し、遺伝暗号システムの成立基盤を探求することを目的とする。動物ミトコンドリアでは大部分の動物門において現在までに6種類の非普遍暗号(UGA,AUA,AAA,AGA,AGG, UAA)が発見されているが、UAAを除く5種類についてはそれらを解読するtRNAアンチコドンが特定の動物種で解析され、アンチコドン1字目(ウォブル位)または2字目に存在する修飾塩基がコドン解読に決定的な役割を持つことが、主として本研究代表者のグループにより解明された。前年度までにすでに、ヒト、ウシ(哺乳動物)、マボヤ(尾索動物)とヤリイカ(軟体動物)のミトコンドリアtRNAの解析を行い、非普遍コドンに対応するtRNAのアンチコドンウォブル位に修飾塩基、5-タウリノメチル(2-チオ)ウリジン(tm5 (s2)U)、5-ホルミルシチジン(f5C)、7-メチルグアノシン(m7G)を同定した。tm5(s2)Uとf5Cは3字目がAまたはGのコドンを限定して解読し、m7GはU,C,A,Gで終わる4種類すべてのコドンに対合することが判明した。未修飾のCをウォブル位にもつMet用のtRNAは、37位が未修飾の場合はAUGだけしか読まないのに対し、そこがt6Aで修飾されているとAUGだけでなくAUAもMetに翻訳することが解明された。ウォブル位の他の未修飾塩基UとAは4コドンと対合し、GはU,C,Aで終わる3コドンと対合することがすでに明らかになっている。これらの知見から、普遍暗号成立以前の初期遺伝暗号においては、塩基修飾システムは存在しなかったと考えられるため、ウォブル位にそれぞれU,C,A,Gをもつ未修飾のtRNAがどのようにコドンを解読し遺伝暗号表を成立させたかの機構が推定できると思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度中に完了予定であったウニ(棘皮動物)のミトコンドリアtRNAの解析がLC/MSの不具合など諸般の事情から大きく遅れ、今年度にずれ込んだ。しかし「未修飾のCをウォブル位にもつMet用のtRNAは、37位が未修飾の場合はAUGだけしか翻訳しないのに対し、そこがt6Aで修飾されているとAUGだけでなくAUAもMetに翻訳する」という事実がウニの解析で確認され、またウニtRNATrpのアンチコドンウォブル位はタウリン修飾を持つことが判明したことなど、大きな進展も得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)未解析の動物門(頭索動物(ナメクジウオなど)、扁形動物(プラナリアなど)、海綿動物(海綿など)、平板動物(センモウヒラムシなど))について、取得可能な動物種を探索し、可及的速やかな取得を図る。 2)in vitro 翻訳反応については、市販の翻訳システムを活用し、in vitro転写系による未修飾tRNAを大量に取得し、これらを活用して、研究の推進を図る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年は研究室の移転、測定装置の故障(東大工学部)などの出来事が相次いだため、tRNAの解析が大幅に遅れたため、新しい試料の調製、分析に影響が出た。その結果、物品費の支出がかなり抑制されたため、次年度使用額が発生した。 今年度は上記の遅れを取り戻すため、研究を加速させ、物品費の支出を順調に進行させたい。
|