2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトのメラノプシン遺伝子多型と生理機能:機能的潜在性の発現と環境適応能
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24370102
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
樋口 重和 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (00292376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光 / 遺伝子多型 / 概日リズム / 睡眠 / メラノプシン / 瞳孔 |
Research Abstract |
ヒトの網膜にはメラノプシンという光感受性物質を含む神経節細胞(mRGC)があり、生体リズムの光同調や瞳孔の対光反応などの光の非視覚的作用にとって重要な役割を担っている。我々はヒトのメラノプシン遺伝子(OPN4)に着目し、遺伝子多型と光の非視覚的作用の関連について研究を行っている。今までの研究でメラノプシン遺伝子の非同義置換多型(rs1079610 / I394T)と瞳孔の対光反応の間に関連があることを明らかにした。今年度は、睡眠との関連について調べた。健康な男女大学生I394Tの遺伝子型(TT型、TC型、CC型)と睡眠習慣の関係を調べた。遺伝子型はTT型が223名、TC型が91名、CC型が14名であった。睡眠習慣の結果では、CC型の就寝時刻と覚醒時刻が他の遺伝子型(TT、TC)に比べ有意(p<0.05)に遅かったが、TT型とTC型の間には睡眠習慣における有意差が見られなかった。本研究より、OPN4遺伝子多型のI394Tが睡眠習慣に関連していることが示唆された。先行研究ではCC型は光に対して敏感であることがわかっている。夜の光は概日リズムの位相を後退させることから、CC型で睡眠のタイミングが遅かったのは、夜の光の影響を強く受けたていたことが示唆された。また、睡眠研究とは別に、瞳孔の対光反応に関する実験も継続しており、最も強く対光反応が起こる光の波長(ピーク波長)が遺伝子型によって異なることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メラノプシン遺伝子多型と瞳孔の対光反応の関係に加え、本年度は睡眠習慣との関連も明らかにできたことは、当初の目標通りである。一方で、課題名にもある潜在的機能性を明らかにする実験はまで予備実験の段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はメラノプシン遺伝子多型と機能的潜在性の関係について明らかにすることを目的とした実験を行う。過去の動物を使った実験で暗闇で飼育するとメラノプシン遺伝子発現が増えることが明らかになっている。一方、ヒトの光への反応性は光曝露履歴が関与していることも知られている。具体的には日中に暗い環境で過ごした後に光曝露を行うと、光への反応が強まることが知られている。この反応の強化ににはメラノプシンが関与している可能性がある。本年度の研究では、メラノプシンの関与を具体的に明らかにすることと、その関与に遺伝子型の違いがあるかを明らかにするための実験を行う。また、前年度に得られた遺伝子型とピーク波長に関する論文をまとめて投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に計画していた実験データの追加分析が施設の都合上実施できなかったため。 実験データの追加分析のための施設使用料と研究補助雇用代として使用する。
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