2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトのメラノプシン遺伝子多型と生理機能:機能的潜在性の発現と環境適応能
Project/Area Number |
24370102
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
樋口 重和 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (00292376)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 光 / 波長 / メラノプシン / 瞳孔 / 遺伝子多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜の神経節細胞の一部はメラノプシンと呼ばれる光色素を発現し、生体リズムの光同調だけでなく、メラトニンの光抑制や瞳孔の対光反応などの急性的反応に大いに寄与する。我々の今までの研究で、ヒトのメラノプシン遺伝子(OPN4)の一塩基多型(SNP)の中で、ミスセンス突然変異を引き起こすI394T SNP(rs1079610)と瞳孔反射や睡眠習慣との関連について調べ、I394Tの遺伝子型によって光感受性が異なることがわかった。一方で、メラノプシンは約480 nmでピーク反応性を示す特徴を有することが知られている。今年度は、遺伝子型の間でピーク反応性の比較を行った。実験では、10種類の単波長光に対する瞳孔の縮瞳率(%)から光波長反応曲線を推定した。その結果、TC型の反応曲線がTT型に比べてより短い波長の方にシフトしており、両者のピーク反応性が有意に異なることが明らかになった(TT型:λmax 482 nm、でTC型:λmax 477 nm)。本研究より、OPN4遺伝子多型I394Tはメラノプシンの分光感度にも関連することが示唆された。また、先行研究では青色光(λpeak 465 nm)でCアリルを持つ遺伝子型(TC、CC型)がTT型より光に敏感に反応することがわかっていたが、それには遺伝子型によるピーク反応性の違いが関連している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
夜間の2時間の暗順応によって、その後の光曝露によるメラトニン抑制が強まることを明らかにした。この暗順応後の光感受性の増加はメラノプシンの潜在的な機能の一種と考えられる。しかしながら、暗順応後の光感受性の増加と遺伝子型との関係についてはまだ検討できていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
暗順応後の光感受性の増加と遺伝子型の関係を明らかにするには、より多くの被験者と実験が必要なため予算の関係から実施は困難である。今年度は、最も新しい研究成果(メラノプシン遺伝子型で瞳孔の対光反応のピーク波長が異なるところ明らかにした成果)を論文にまとめる予定である。
|
Causes of Carryover |
本研究では、今までに光に対する非視覚的な作用の個人差と光感受性物質であるメラノプシンの遺伝子多型と関連を明らかにしてきた。最後の実験として、メラノプシンの光感受性の波長特性を詳細に明らかにするための実験を行い、分析の途中ではあるが興味深い結果が得られている。研究の進捗が予定より遅れたため、結果成果のまとめ、成果の公表(学会発表と論文投稿)のための予定していた額が未使用となっている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
人件費として、実験結果のデータ整理や分析のために研究補助者を雇用するために使用。旅費として、研究成果を報告するために学会参加(2015年6月に北海道で開催される日本生理人類学会への参加)の旅費として使用。その他として、研究成果を海外の学術雑誌に投稿するために、英文校正費や論文投稿および掲載費として使用(2015年秋に論文掲載を予定)。
|