2012 Fiscal Year Annual Research Report
イネの耐乾性に寄与する側根形成遺伝子の機能とネットワークの解明
Project/Area Number |
24380007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
犬飼 義明 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (20377790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兒嶋 孝明 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (40509080)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 植物 / イネ / メリステム / 発生・分化 / 根 / オーキシン / 突然変異体 / 遺伝子 |
Research Abstract |
種子根や冠根といった主軸根の伸長は正常であるが、側根長のみが著しく減少するε111変異体を得ることに成功した。SLL1遺伝子はstearoyl-acyl carrier protein fatty acid desaturase familyに属するタンパク質をコードし、脂肪酸の不飽和化を導くと推定された。そこで原品種とSLL1変異体間において種々の脂肪酸量を比較した結果、本変異体ではステアリン酸(C18:0)といった飽和脂肪酸量が原品種に比べ有意に増加していることが判明した。したがって、これに基づく細胞膜の伸展性の低下が側根を構成する個々の細胞の伸長を阻害し、結果として本変異体の側根長の減少を導くと考えられた。SLL1遺伝子の発現部位を解析した結果、本遺伝子は側根の細胞伸長が生じる根端部位における発現が確認されたのに対し、冠根の同部位ではその発現は全く観察されなかった。したがって、SLL1遺伝子は種子根や冠根といった主軸根とそれらから発生する側根間での発現性の違いにより、側根特異的に根の伸長成長を制御することが明らかとなった。 加えて、このSLL1遺伝子の過剰発現個体では顕著な側根長の増加が認められた。側根は種子根や冠根に比べ著しく直径が小さいため、光合成速度が低下するストレス環境下において総根長を維持・増加させる上では、光合成同化産物を節約できるという点で最も重要な根であることがこれまでに数多く報告されている。したがって、SLL1遺伝子の利用は今後の根系形態の人為的改良を目指す上で非常に有用であると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった、側根メリステムサイズに関わる転写因子の標的候補遺伝子の選抜に成功した。また、他の側根メリステムサイズに関わる遺伝子の単離にも成功しており、計画通りに順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
特に研究を遂行する上での課題等はなく、引き続きイネの側根メリステムサイズの制御ネットワークを順・逆遺伝学的手法を駆使することにより明らかにし、根系形態改良のための研究基盤の確立を目指す。
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Research Products
(5 results)