Research Abstract |
農業生物資源研究所の世界のイネコアコレクション63品種から浸透圧ストレス耐性ならびに感受性品種のスクリーニングを行った.催芽処理後,人工気象室内で水耕栽培を行い,水耕液へ移植1週間後,浸透圧ストレス処理として水ポテンシャルが-0.21MPaになるようにポリエチレングリコール6,000を,塩ストレス処理として濃度が50nMになるようにNaC1を処理した.サンプリング後根系画像を取り込み,根系の形態的形質(根長・側根数)と乾物重を測定し,耐浸透圧ストレス性品種と浸透圧ストレス感受性品種,耐塩性品種と塩感受性品種それぞれ3品種ずつを選抜した.また,スクリーニングしたストレス耐塩性と感受性品種において,葉位ごとにNa+含量を測定したところ,耐塩性品種では上位葉へのNa+移行を抑制していた。また,塩感受性品種と比較して耐塩性品種では,塩ストレス条件下での葉身水ポテンシャルの維持,根の浸透ポテンシャルの低下,通洞抵抗の維持が認められた.以上よりイネの耐塩性機構のとして,Na+輸送能力と水分保持能力が耐塩性に影響することが示唆された.また,根の形態では,塩ストレス処理により,耐塩性品種において太く長い側根(L型側根)の数が増加するが,感受性品種ではこの現象は認められなかった.浸透圧ストレスについては現在スクリーニングが終了した段階であるが,先行している塩ストレスに関する知見とともに,今年度の結果を基として,次年度以降水分生理学的側面,代謝生理学的側面,分子生物学的側面からの,それぞれの耐ストレス性機構の解明と,根系の可塑性発現過程が果たす役割について解明につなげる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究である網羅的な材料(イネコアコレクション)を用いた耐ストレス性ならびに感受性品種のセレクションが浸透圧ストレスと塩スレとレスで終了した.これは次年度以降行う研究の基礎となるデータであるので,次年度以降の水分生理学的,代謝生理学的,分子生物学的研究が順調に進行できると予想される.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り,スクリーニングした品種を用い,代謝生理学的,分子生物学的側面から耐ストレス性品種と感受性品種の際を網羅的に解析した上で,特徴ある形質についてさらに詳細な解析を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度への繰り越しができた主な理由は,予算処理の都合上,研究員の雇用開始時期が数ヶ月ずれ,そのために予定していた人件費が残ったためである.この繰り越し分を,25年度のメタボローム解析の分析件数を増やすために当て,計画時点よりもより詳細なデータを得るために用いることとする.
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