2013 Fiscal Year Annual Research Report
統合オミクス解析によるブドウの二次代謝産物蓄積機構のプロファイルと応用展開
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24380019
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
白武 勝裕 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (90303586)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ブドウ / オミクス解析 / 二次代謝産物 / レスベラトロール / アントシアン / 果皮 / 培養細胞 |
Research Abstract |
本課題では,機能性が高い二次代謝産物を蓄積するブドウに焦点を当て,統合オミクスにより二次代謝産物の合成・蓄積システムを明らかにすることを目指している.当初計画の①~⑤の項目のうち,平成25年度は以下の研究を実施した. ① ブドウへの二次代謝産物の誘導処理:ブドウ果皮における二次代謝産物の誘導実験は平成24年度に完了したが,平成25年度に理研BRCよりブドウ培養細胞(VW系統とVR系統)を取得し,その有効性を判断すべく二次代謝産物の誘導実験を行った.その結果,VR系統のみが可視光により高濃度のアントシアンを蓄積することと,VW系統のみがジャスモン酸とエリシター処理によりレスベラトロールを高濃度に蓄積することが明らかになった.VW系統とVR系統は同一カルスから派生したにも関わらず,外部刺激応答と蓄積二次代謝産物の種類が全く異なっており,外部刺激応答と蓄積二次代謝産物のスイッチングの機構解明に有効な材料であることが判明した. ②-2 プロテオミクス(タンパク質発現):平成24年度にブドウ果皮からのタンパク質試料の抽出が困難なことが明らかになったが,平成25年には,上記①の項目のブドウ培養細胞からのタンパク質試料の抽出法を確立し,膜画分に輸送体を含む795個のタンパク質の同定に成功した. ③統合オミクスの「プロファイル作成」と重要遺伝子候補の探索:ブドウのゲノム情報の整備と,KEGG pathwayおよびKaPPA-Viewの改変を行い,平成24年度に取得したブドウ果皮におけるトランスクリプトームデータとメタボロームデータを代謝マップに投影することに成功した.その結果,紫外線照射により,二次代謝の中でレスベラトロール合成のみが誘導され,その鍵遺伝子がスチルベン合成酵素遺伝子であることを特定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画のうち,「① ブドウへの二次代謝産物の誘導処理」については,当初計画した果皮における実験を予定通り完了したが,果皮以上に有効な材料と考えられるブドウ培養細胞の検証を行い,二次代謝産物の誘導実験に最適であることを見出し,当初計画以上の成果を上げた. 「②-1トランスクリプトミクス」は平成24年度に完了している.遅れていた「②-3 メタボロミクス」のについては,上述のようにブドウ培養細胞を用いることで成功した.予想以上のタンパク質数を同定することに成功したため,次年度には二次代謝誘導の処理区を増やし,可溶性タンパク質まで解析範囲を広げて実施する. 「③ 統合オミクスの「プロファイル作成」と重要遺伝子候補の探索」については,順調に進捗し,代謝マップの作成と二次代謝の鍵遺伝子の特定に成功した.その過程で,KEGG pathwayやKaPPA-Viewの改変など,我々以外の研究者に利益のある研究ツールの更新を行うなど,当初計画以上の成果を上げた. 「④二次代謝産物の‘輸送体‘および蓄積の‘鍵遺伝子’の特定(形質転換ブドウ細胞の作出)」については,ブドウ培養細胞の形質転換系の構築に手間取っており計画が遅れているが,平成26年度にはこれに注力し,完了できる予定である. 以上のように一部遅れている項目もあるが,当初計画を上回る項目が多数あり,全体として計画はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように,平成25年度に理研BRCより入手したブドウの培養細胞(VW系統とVR系統)が,ブドウの外部刺激応答と蓄積二次代謝産物のスイッチングの機構解明に有効な材料であることが明らかとなった.当初計画から用いていた果皮に比べ,培養細胞は時期を選ばずに実験できる,様々な外部刺激を直接的に処理できる,プロテオミクスの解析試料の調製が容易など多くのメリットがあるため,今後の研究材料の中心に据え,トランスクリプトミクス,プロテオミクスを実施する.特に,プロテオミクスは,予想以上のタンパク質数を同定することに成功したため,次年度には二次代謝誘導の処理区を増やし,可溶性タンパク質まで解析範囲を広げて実施する. 当初計画では,「⑤ブドウ培養細胞での二次代謝産物の合成およびブドウ二次代謝産物合成トマトの作出」という研究項目を設けていたが,平成25年度に英国研究機関の関連分野の研究者と話をした際に,本項目で掲げたブドウ二次代謝産物合成トマトの作出に成功したとの情報を得た.一方,この研究者からブドウ二次代謝産物の合成の誘導する転写因子を見出したとの情報を得,この遺伝子の分譲を受けることになった.このため,ブドウ二次代謝産物合成トマトの作出を中止し,この転写因子を活用したブドウ培養細胞での二次代謝産物の合成に注力することとした. 以上を踏まえ,最終年度(平成26年度)は,ブドウの培養細胞を用いた統合オミクス(アントシアン合成とレスベラトロール合成の誘導刺激の違いとスイッチング機構の解明)とブドウ培養細胞での二次代謝産物の合成に注力して研究を実施する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究全体としては,おおむね順調に進捗しているが,形質転換ブドウ培養細胞の作出が遅れている.一方,他の研究者が先行研究を発表したことから,形質転換トマトの作出を中止することとした.このため,平成25年度に実施するはずであった,形質転換ブドウ培養細胞と形質転換トマトの作出にかかる物品費と人件費を執行することがなかった. 平成26年度には,英国研究者との共同研究により,ブドウ二次代謝産物の合成の誘導する転写因子を導入したブドウ培養細胞の作成を開始し,それに注力する.このため,平成25年度に使用しなかった形質転換ブドウ培養細胞の作出にかかる物品費と人件費をこれに充てる.また,ブドウの培養細胞(VW系統とVR系統)を用いた外部刺激応答と蓄積二次代謝産物のスイッチングの機構解明が有効であることが判明した.このため,当初計画したブドウ果皮の統合オミクス解析に加え,ブドウの培養細胞の統合オミクス解析を実施することとなった.この実施にかかる経費は,中止することとなった形質転換トマトの作出にかかる物品費と人件費を充てる.
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Transcriptome analysis an European pear (Pyrus communis L.) and its giant fruit sport using next-generation sequencing technolog2014
Author(s)
Nashima K., Terakami S., Nishitani C., Yamamoto T., Habu T., Takahashi H., Nakazono M., Isuzugawa K., Hanada T., Takashina T., Matsumoto S., Otagaki S., Mori H., Oikawa A. and Shiratake K.
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Journal Title
J. Hortic. Sci. Biotech.
Volume: -
Pages: in press
Peer Reviewed
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[Journal Article] Microarray analysis of gene expression patterns during fruit development in European pear (Pyrus communis)2013
Author(s)
Nashima K., Shimizu T., Nishitani C., Yamamoto T., Takahashi H., Nakazono M., Itai A., Isuzugawa K., Hanada T., Takashina T., Matsumoto S., Otagaki S., Oikawa A. and Shiratake K.
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Journal Title
Scientia Horticulturae
Volume: 164
Pages: 466-473
Peer Reviewed
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[Journal Article] Transcriptome analysis of giant pear fruit with fruit-specific DNA reduplication on a mutant branch2013
Author(s)
Nashima K., Takahashi H., Nakazono M., Shimizu T., Nishitani C., Yamamoto T., Itai A., Isuzugawa K., Hanada T., Takashina T., Kato M., Matsumoto S., Oikawa A. and Shiratake K.
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Journal Title
J. Japan. Soc. Hort. Sci.
Volume: 82
Pages: 301-311
Peer Reviewed
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[Presentation] Genome-wide identification and expression analysis ofABC transporters in Solanum lycopersicum.2013
Author(s)
Mizuno, A., Sone, K., Suzuki, M., Hioki, J., Otagaki, S., Matsumoto, S., Aoki, K., Shibata, D. and Shiratake, K.
Organizer
10th JSOL International Symposium on Solanaceae Genomics
Place of Presentation
Osaka
Year and Date
20131229-20131230
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[Presentation] Multi-Omics of Bud Mutant of Pear Setting Giant Fruits2013
Author(s)
K Shiratake, K Isuzugawa, A Oikawa, T Takashina, H Mori, R Nakabayashi, Y Jikumaru, T Hanada, K Nashima, R Morimoto, T Otsuka, M Suzuki, M Kato, S Otagaki, Y Fukao, Y Ogata, H Murayama
Organizer
Gordon Research Conferences “Plant Metabolic Engineering”
Place of Presentation
Boston
Year and Date
20130707-20130712
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