2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24380037
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石田 宏幸 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60312625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 周 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70181617)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オートファジー / イネ / 葉緑体 / 老化 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イネのライフサイクルにおいて、細胞内タンパク質分解システム・オートファジーが果たす役割について明らかにすることを目的とし、その成果を基盤に米の生産性や品質のさらなる向上に向けた応用研究の展開を目指すものである。より具体的には、逆遺伝学的に同定したオートファジーに必須の遺伝子(autophagy-related gene; ATG)を欠損するイネ変異体の一生、すなわち発芽、成長、生殖、登熟、の各段階における表現型とその要因について、生理・生化学および形態・細胞生物学の主に2つの方向からプロファイリングを行う。それらを手がかりにオートファジーがイネの作物としての重要形質にどのように寄与しているのかについて分子・細胞レベルで明らかにすることを目的にした。今年度は以下の点を明らかにした。 イネのオートファジー欠損変異体Osatg7-1は、野生体よりも初期成育の時点で個体サイズが小さく、その差は低窒素栄養や弱光条件になるほど広がった。初期成育の差は、種子栄養の幼殖物への転流がやや滞っていることで生じることが示唆された。Osatg7-1では水耕液からの窒素吸収は野生体と差がなかったが、老化葉でのオルガネラやタンパク質の分解が遅延することで個体内の窒素転流が抑制されていた。また転流窒素の減少により葉面積や分けつ数が減少した。結果としてOsatg7-1では個体の窒素利用効率とバイオマスが減少した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、イネの一生、すなわち発芽、成長、生殖、登熟、の各段階においてオートファジーが果たす役割について、明らかにすることが目的である。これまでにオートファジー関連遺伝子の欠損変異体を単離し、その各段階における表現型について解析を進めてきた。生殖過程については、Osatg7-1では、オートファジーが機能しなくなることで出穂時期が遅れること、さらには花粉や葯の発達が不完全となり雄性不稔となることを明らかにした。さらに栄養成長には、Osatg7-1の葉では主要なタンパク質の分解や窒素転流が滞り、個体の窒素利用効率や乾物生産が低下することを明らかにした。また蛍光タンパク質を用いてイネにおけるオートファジーやRCBの可視化・評価系を構築することができた。それらに加えて今年度は栄養が制限される条件下ではオートファジーの成長への貢献度が増すこと、また種子栄養の利用にもオートファジーが関係している可能性を示すことができた。よって本研究の目的の達成に向けて着実な成果が得られていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度にはイネの栄養成長期におけるオートファジーの役割についてより詳しく知るため、窒素栄養や光の制限下でのオートファジー欠損変異体イネの成長について解析した。その結果、光の制限下では変異体で上位葉のクロロフィル量が野生体に比べて減少するという想定外の結果が得られた。この表現型はこれまでに知られるオートファジーの役割からは説明することができず、今後も解析を進める必要がある。このクロロフィル減少の要因について明らかにすることができれば、光の制限下でのオートファジー欠損変異体の成長抑制を説明することが可能になるであろう。
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Causes of Carryover |
イネの栄養成長期におけるオートファジーの役割についてより詳しく知るため、窒素栄養や光の制限下でのオートファジー欠損変異体イネの成長について解析した。その結果、光の制限下では変異体で上位葉のクロロフィル量が野生体に比べて減少するという想定外の結果が得られた。この表現型はこれまでに知られるオートファジーの役割からは説明することができず、成果として発表するためにはイネの栽培期間を延長して解析をする必要があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費は、植物栽培用品30個として計30万円、解析用の薬品30個として計30万円、顕微鏡用品20個として計20万円を使用する予定である。旅費は国内学会での成果発表を2人で合計20万円を予定している。人件費としては植物の栽培補助で1人、6か月で90万円、論文投稿時の塩分校閲料として10万円を予定している。その他は論文掲載料20万円、機器使用料30万円を予定している。
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[Journal Article] Establishment of monitoring methods for autophagy in rice reveals autophagic recycling of chloroplasts and root plastids during energy limitation2015
Author(s)
Izumi, M., Hidema, J., Wada, S., Kondo, E., Kurusu, T., Kuchitsu, K., Makino, A., Ishida, H.
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Journal Title
Plant Physiology
Volume: 167
Pages: 1307-1320
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Autophagy supports biomass production and nitrogen use efficiency at the vegetative stage in rice2015
Author(s)
Wada, S., Hayashida, Y., Izumi, M., Kurusu, T., Hanamata, S., Kanno, K., Kojima, S., Yamaya, T., Kuchitsu, K., Makino, A., Ishida, H.
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Journal Title
Plant Physiology
Volume: 167
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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