2012 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄応答欠損変異株と情報伝達因子間相互作用で紐解く硫黄同化・代謝の制御機構
Project/Area Number |
24380040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
丸山 明子 九州大学, 農学研究院, 准教授 (70342855)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 硫黄同化 / 硫黄代謝 / 変異株 / タンパク質間相互作用 |
Research Abstract |
植物の硫黄同化・代謝能は、作物の生産性・品質のみならず、発がんを予防するグルコシノレートの蓄積量の調節、環境修復能に大きく影響する。応募者は、遺伝学的な解析から、硫黄同化・代謝系の制御因子として、硫黄欠乏(-S)に応じて硫黄同化系を正に、硫黄二次代謝系を負に制御する転写因子SLIM1を見出した。同様の実験からslim1とは異なる部位に変異を持つ変異株slim2~5を得ている。SLIM1の制御下にある遺伝子の解析から、mGLS生合成の抑制因子RMGを見出した。予備的な実験から、SLIM1、RMGに共通の相互作用タンパク質候補IPが存在する可能性を見出している。本研究では、硫黄栄養応答欠損変異株slim2~5について原因遺伝子の同定と機能解析を行うとともに、IPとSLIM1、RMGとの相互作用機構、これらのタンパク質複合体による遺伝子発現調節機構を解析し、-S応答と硫黄同化・代謝系制御の新規制御機構を明らかにする。得られる成果は、硫黄栄養ストレスの感知から硫黄同化・代謝系の制御に至る情報伝達系の総合的理解をもたらし、目的別に代謝系を制御する上での分子基盤となる。 平成24年度には、以下の成果が得られた, 1)slim2~5の解析による新規硫黄同化系制御因子の同定と機能解析 (1)slim2~5原因遺伝子の座乗染色体の決定、(2)slim2~5の表現型解析、および、(3)slim2~5とslim1との掛け合わせ後代F2種子の採取、を行った。 (1)の結果、slim2、slim4については染色体4番に、slim3、slim5については染色体3番に原因遺伝子が座乗していることが推定された。 (2)slim2~5の表現型については、硫黄十分条件(+S)および-Sにおける成長、-S応答遺伝子の発現、硫黄関連代謝物量、を解析した。それぞれの項目について、slim1との違いやslim2~5間の違いが認められた。 (1)および(2)の結果は、slim2~5を解析することで複数の硫黄同化系制御因子を単離できることを示している。 2)IPとSLIM1,RMGとの相互作用が硫黄同化・代謝系の制御に果たす役割の解析 (1)酵母2ハイブリッド法(Y2H)によるSLIM1-IP、RMG-IP、SLIMI-RMG間の相互作用の確認、(2)IP欠損株・高発現株の作出、および、(3)IP、SLIM1、RMGに対する抗体の作製、を行った。 (1)の結果、SLIM1-IP間、RMG-IP間の相互作用が確認できたが、SLIM1-RMG間の相互作用は検出できなかった。このことは、IPに両者の間をつなぐ役割がある事を示唆している。 (2)IP欠損株・高発現株を作出したところ、どちらの株においても植物の成長が著しく減じた。この事から、植物の生育にはIPの発現部位や発現量の適切な調節が必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
slim2~5変異株の解析については、原因遺伝子の決定、表現型の解析ともに1頂調に進展している。共同研究を行うことにより、座乗染色体の決定が効率的に進行したことが大きく寄与している。 IPとSLIM1,RMGのタンパク質問相互作用についても酵母2ハイブリッド法による確認ができたが、生化学的な解析に着手することができればよりよかった。
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Strategy for Future Research Activity |
変異株の解析については、原因遺伝子の決定を最優先に行う。次世代シークエンサーを用いて迅速に変異部位を同定する。 複数の変異部位が同定されると予測され、その中から真の原因遺伝子を決定する段階に時間と労力がかかる。表現型や遺伝4情報を基に、解析する遺伝子や変異株を絞り込むことで効率的に決定したい。 タンパク質問相互作用の免疫沈降やBiFC法による検証にも重点を置く。IPの高発現や欠損により植物の生育が減じたのは予想外であったが、生化学的な実験を基に仮説立てを行うことでIPの生理的意義に近づけると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には旅費・謝金・設備使用料を予定よりも削減できたため、基金分を次年度に繰り越せた。平成25年度以降には全体の研究計画に占める分子生物学実験の割合が増すので、試薬や少額機器にあてる予算の割合を大きくする。また、植物の栽培や組み換え遺伝子作製にあたる実験補助者を雇用する。
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Research Products
(3 results)