2013 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄応答欠損変異株と情報伝達因子間相互作用で紐解く硫黄同化・代謝の制御機構
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24380040
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
丸山 明子 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70342855)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 硫黄同化 / 硫黄代謝 / 変異株 / タンパク質間相互作用 / ドメイン解析 |
Research Abstract |
1) slim2~5の解析による新規硫黄同化系制御因子の同定と機能解析 slim3,4,5の全ゲノム配列を解読し、各変異株の変異部位を同定した。コード領域に存在し、翻訳産物のアミノ酸配列を変化させるものを抽出したところ、各変異株について100以上の変異が検出された。そこで、同定した変異部位について、各変異株の戻し交雑F3(各20系統)由来ゲノムDNAを用いた多型解析を行い、変異株に保存される変異を絞り込むことにした。年度末までにslim3で12遺伝子、slim5で20遺伝子まで原因遺伝子を絞り込めた。今後、さらに原因遺伝子を絞り込み、10遺伝子以内に絞り込めた時点で相補実験に着手する。 2) IPとSLIM1, RMGとの相互作用が硫黄同化・代謝系の制御に果たす役割 酵母2ハイブリッド法(Y2H)によるSLIM1-IP、RMG-IP、SLIM1-RMG間の相互作用を確認し、SLIM1-IP間、RMG-IP間の相互作用を確認した。同条件においてSLIM1-RMG間の相互作用は検出できなかったことから、IPに両者の間をつなぐ役割があるのではないかと考えている。IP欠損株・高発現株について、硫黄欠乏応答性遺伝子群の転写産物量を測定した。いずれにおいても硫黄欠乏に応じた発現変化の程度が減じるという、slim1様の変化を示した。この事は、IPの適切な発現量がSLIM1活性に必要であることを示唆する。 SLIM1のドメイン解析に着手した。SLIM1の機能発現は遺伝子発現によらないため、タンパク質の修飾や相互作用による機能発現機構の存在が示唆される。タンパク質の修飾の中でもユビキチン化に着目し、SLIM1中のリジン残基に変異を導入した。変異SLIM1によるslim1の相補を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・ slim3,4,5で検出された変異が予想以上に多く、原因遺伝子の絞り込みに多くの時間を費やした。 ・ SLIM1-IP、RMG-IP、SLIM1-RMG間の相互作用を免疫沈降法で検証しているが、肯定的な結果が得られていない。この点についても、抗体を変えるなどの試行錯誤を行っており、当初の計画よりも時間がかかっている。 ・ SLIM1のドメイン解析に着手したことも他の計画が遅れる理由となった。SLIM1-IP、RMG-IP、SLIM1-RMG間の相互作用が免疫沈降法で確認できない場合、当初の研究計画では、SLIM1のタンパク質修飾をリン酸化に着目して解析することにしていた。これに加え、ユビキチン化の関与についても解析することとし、今年度はリジン残基への変異導入を行った。来年度はリン酸化に関与するセリン、スレオニン、チロシンへの変異導入を行うとともに変異SLIM1による相補実験を行う。SLIM1活性のオンオフに関わる残基が同定できれば、硫黄同化・代謝の制御機構を解明する上での大きな進歩となる。
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Strategy for Future Research Activity |
・ 変異株については、原因遺伝子が絞り込めつつあるslim3、slim5を優先して解析する。原因遺伝子が10遺伝子以内に絞り込めた時点で相補実験に着手し、平成26年度中に原因遺伝子を決定する。 ・ IPとSLIM1, RMGとの相互作用を免疫沈降法で示す実験が難航している。この点については、経験のある研究室に教えを請うなどして解決していきたい。相互作用の調節が植物体内の硫黄栄養状態による場合、免疫沈降法では相互作用が検証できないという可能性もある。そのため、生体内での相互作用をBiFC法により検証する。 ・ IPとSLIM1, RMGとの相互作用が酵母でのみ認められる擬陽性という可能性も現時点では捨てきれない。成果を確実に得るため、SLIM1のドメイン解析を行う。 転写因子の活性調節機構としてよく知られるユビキチン化、リン酸化、また硫黄の関わる修飾であるジスルフィド結合、硫酸化に着目し、SLIM1中のリジン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン残基に変異を導入する。変異SLIM1によるslim1の相補を観察し、SLIM1の機能発現に関わるアミノ酸残基を特定する。当研究室において実験系が確立されているため、確実に成果が得られると考えている。免疫沈降法またはBiFC法によりIPとの相互作用が認められた場合にも、相互補完的な結果が得られる。 ・ 研究期間が残すところ2年となるため、優先順位を定めて確実に研究に取り組む。実験としては、slim3,5の原因遺伝子の決定、ドメイン解析を優先する。また、RMGやその他のSLIM1の下流で働く因子について、これまでに得られている成果を論文として発表することに力を注ぐ。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には旅費・謝金・設備使用料を予定よりも削減できた。共同研究により分子生物学実験にかかる経費についても予定よりも削減できた。このため、基金分を次年度に繰り越すことができた。 平成26年度以降には全体の研究計画に占める分子生物学実験の割合が増すので、試薬や少額機器にあてる予算の割合を大きくする。また、植物の栽培や組み換え遺伝子作製にあたる実験補助者を雇用する。
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