2014 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄応答欠損変異株と情報伝達因子間相互作用で紐解く硫黄同化・代謝の制御機構
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24380040
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
丸山 明子 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70342855)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 硫黄同化 / 硫黄代謝 / 変異株 / タンパク質間相互作用 / ドメイン解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) slim3~5の解析による新規硫黄同化系制御因子の同定と機能解析: 前年度に引き続きslim3,4,5原因遺伝子の絞り込みを行った。slim3で2遺伝子、slim5で18遺伝子まで原因遺伝子を絞り込んだ。現在、slim3の原因遺伝子候補による相補実験に着手している。 2) IPとSLIM1, RMGとの相互作用が硫黄同化・代謝系の制御に果たす役割: 酵母2ハイブリッド法(Y2H)により、グルコシノレート(GSL)生合成の抑制因子であるRMGがGSL生合成を促進する転写因子と相互作用することを見出した。現在、免疫沈降やBiFCによりin vitro, in vivoでの相互作用を検証している。今後、一過的転写活性化実験やゲルシフト実験により、この相互作用がGSL生合成遺伝子の発現調節に果たす役割を解析する。 3) SLIM1の機能発現機構およびSLIM1によらない硫黄栄養応答系の分子機構: SLIM1のドメイン解析により、SLIM1の機能発現にC末端側の配列が必要であることを見出した。現在、この領域をさらに絞り込んでいる。 根におけるSULTR2;1の硫黄欠乏による遺伝子発現上昇は、SLIM1の制御を受けない。この遺伝子発現応答にSULTR2;1の3’非転写領域が必要であること、この応答が硫黄欠乏下での硫酸イオン吸収・地上部への移行を高めすことを見出し、論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・変異株の解析で検出された変異が予想以上に多く、原因遺伝子の絞り込みに多くの時間を費やした。 ・SLIM1-IP、RMG-IP、SLIM1-RMG間の相互作用を免疫沈降法で検証するのに多くの時間を費やした。未だ肯定的な結果は得られていないが、RMGとGSL生合成促進因子との相互作用がY2Hで認められたため、これまでに培った技術を活かして、相互作用の検証を行う。 ・SLIM1のドメイン解析に着手したことも他の計画が遅れる理由となった。しかし、SLIM1機能発現に関わる領域を見つけることができた。当初の研究計画であるSLIM1のリン酸化に着目した解析に加え、ユビキチン化、SUMO化に関わるリジン残基への変異導入と相補実験を行っている。予備的ではあるが、機能発現に関わるリジン残基をいくつか見出している。SLIM1活性のオンオフに関わる残基が同定できれば、硫黄同化・代謝の制御機構を解明する上での大きな進歩となる。 ・SULTR2;1の硫黄欠乏応答についての解析を進めたことにより、当初の計画が遅れた。しかし、新規な硫黄栄養応答機構を明らかにすることができたことは大きな進展となった。
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Strategy for Future Research Activity |
・変異株については、原因遺伝子候補を2遺伝子に絞り込めているslim3を優先して解析する。相補実験の結果が出次第、欠損株の解析を行う。 ・RMGとGSL生合成促進因子との相互作用について、免疫沈降法およびBiFC法により検証する。また、この相互作用がGSL生合成酵素の遺伝子発現に及ぼす影響を解析する。今年度中の論文掲載を目指す。 ・SLIM1-IP, IP-RMG間の相互作用については、その調節が植物体内の硫黄栄養状態による可能性がある。この場合、免疫沈降法では相互作用が検証できないため、硫黄栄養条件をかえて育成した植物を用いたBiFC実験を行う。昨年度に作製した抗体認識タグ付きの各タンパク質を発現する植物を用いて、生体内での相互作用を免疫沈降法により解析する。 ・SLIM1のドメイン解析から明らかになったC末端側の調節領域について、さらに領域をせばめ、必要なアミノ酸配列を特定する。昨年度に開始したリジン残基をアラニン置換したSLIM1によるslim1の相補実験を完了し、SLIM1の機能発現に関わるリジン残基を特定する。 ・最終年度となるため、論文化を優先する。RMGやその他のSLIM1の下流で働く因子について、これまでに得られている成果を論文として発表することに力を注ぐ。
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Causes of Carryover |
平成26年度には、物品費・旅費・謝金を他予算から支出することができたため、予定よりも使用額が減じた。このため、基金分を次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には全体の研究計画に占める分子生物学実験の割合が増すので、試薬や少額機器にあてる予算の割合を大きくする。また、植物の栽培や組み換え遺伝子作製にあたる実験補助者を雇用する。論文投稿を少なくとも3件予定しており、論文掲載料、英文校閲費としてそれぞれ70万円、30万円を計上する。
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Research Products
(7 results)