2012 Fiscal Year Annual Research Report
バクテリアのコロニーを作らない変異株を用いたコロニー形成の機構解析
Project/Area Number |
24380044
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
正木 春彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (50134515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重松 亨 新潟薬科大学, 応用生物科学部, 教授 (10315286)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 難培養細菌 / VNC / VBNC / コロニー形成 / 液体培養 / 固体培養 / 大腸菌 |
Research Abstract |
微生物は、遺伝子や生命分子からみた生物多様性のほとんどを占める生命の宝庫だが,その厖大な資源を手に入れる上で最大の障壁は,自然のほとんどの細菌がコロニーとして分離できない難培養状態にあることである。今までに分離されたすべての細菌は最初にコロニーとして分離されたものであり、その生死もコロニー形成能の有無で定義されてきた。従って、自然の多くの細菌が実はコロニーを作らない状態にあるため、コロニー形成とは何かを問い直す必要が生じ、それを通じて難培養性のパラドックスを克服することが重要となる。そのため、 アプローチ1:コロニー形成できない大腸菌を分離し、その性質を調べて、コロニー形成とは何かに答える:温度感受性の大腸菌ライブラリーから、制限温度下で液体培地では増殖できるのに、寒天培地でほとんどコロニーを作らない点変異体を分離した。その一つは脂肪酸合成に関わる遺伝子の点変異だった。 曖昧さのないよう、野生型をベースにその遺伝子のみ欠失した変異体を分離した。これは生育に不飽和脂肪酸を要求するが、培地に微量混在する脂肪酸を、液体培地では最大限利用して生育できるのに対し、固体培地では利用できずにコロニーを作れないこと、さらにこれには、寒天に含まれる成分がプレート上の生育を抑制する効果が加わることが判明した。 アプローチ2:一方、大腸菌を低温飢餓に曝すとコロニー形成能を失い、Viable but nonculturable(VNC)と呼ばれる状態に陥り、これは自然界の細菌がコロニーを作れないモデルとされる。VNC状態に陥る原因は、ある重要な生理機能が減衰するためだと考え、その責任遺伝子をスクリーニングし、その候補となる遺伝子(複数存在すると思われる)の一つを得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アプローチ1で設定した条件を満たす変異株は分離できたが、当初期待した様な液体培養には不要で固体培養に必要な遺伝子の変異体ではなかった。また寒天による阻害も加わり予想しない展開となった。このアプローチでコロニー形成の核心に迫れるかどうかは不明なれど、新知見を明らかにできると考えている。一方、アプローチ2では設定したスクリーニングが有効に働き、重要な遺伝子がみつかり始めたので、今後の展開が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1では、予想しなかった展開ではあるが、様々な栄養などのストレスとコロニー形成との関係を解明する糸口である可能性があり、脂肪酸合成系以外でも得られているコロニー形成欠陥変異体も加えて性質追求を続行する。2では、ストレス下でもコロニー形成を高く保つのに重要な遺伝子を多数見出し、コロニー形成過程の機構とそのバリアを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度交付申請時に購入予定であったオートクレープは、他の研究費で購入することができた。一方、様々な変異株のメタボローム解析やトランスクリプトーム解析に、当初の予定よりも多額の費用が掛かることが判明した。コロニー形成機構の詳細を明らかにするためには必須の出費と考えている。
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