2013 Fiscal Year Annual Research Report
新奇乳酸菌バクテリオシン群の生合成と抗菌作用の分子機構の解明とその展開
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24380051
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
善藤 威史 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50380556)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 乳酸菌 / 抗菌ペプチド / バクテリオシン / 応用微生物 / 細菌 |
Research Abstract |
乳酸菌が生産する抗菌ペプチドであるバクテリオシンは、安全な抗菌物質として様々な分野での利用が期待される。前年度に引き続き新奇乳酸菌バクテリオシンの探索を行うとともに、それらの実用と生合成機構を利用した新奇抗菌ペプチドの創出への展開を図るため、新奇乳酸菌バクテリオシン群の生合成と抗菌作用の分子機構の解明を試みた。 酒母より分離された乳酸菌Lactobacillus sakei D98が3種の新奇バクテリオシンを生産することを明らかにし、それらの構造を決定した。そのうち、sakacin D98bはクラスIIaバクテリオシンに類似した構造を有するものの、他のクラスIIaバクテリオシンとは異なる抗菌スペクトルを示した。この抗菌スペクトルの差異は、sakacin D98bにおいてクラスIIa特有の保存配列に生じた変異による影響と考えられた。 新奇リーダーレスバクテリオシンであるlacticin Qは菌体表層の標的分子を介さずに細胞膜に孔を形成することが明らかとなっていたが、各感受性菌の抗菌活性の強度と細胞膜組成との間には関連が認められなかった。Lacticin Qの抗菌活性の強度には、lacticin Qの作用によって生じるヒドロキシルラジカルの蓄積量が関連していることが明らかとなり、lacticin Qの抗菌活性の選択性には、孔形成能よりもヒドロキシルラジカルの蓄積量と除去能が影響していることが示唆された。 新奇環状バクテリオシンであるleucocin Qの生合成遺伝子群が明らかとなった。そのうち、DUF95スーパーファミリーに属するLcyDが、生産株のleucocin Qの菌体外分泌と自己耐性に関与していることが明らかとなった。LcyD破壊株が成熟型のleucocin Qを菌体内に蓄積していたことから、leucocin Qの環状化は生産株の菌体内で行われることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特徴的な構造をもつ新奇乳酸菌バクテリオシンが複数見出された。また、リーダーレスバクテリオシンの作用機構や、リーダーレスバクテリオシンと複数の環状バクテリオシンの生合成機構が明らかとなりつつある。また、バクテリオシンに変異を導入して評価を行うことで、抗菌活性や菌体外分泌に重要な部位の特定が進んでいる。さらには、環状バクテリオシンの標的分子の解析も進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、生合成遺伝子群の機能の解析を行い、自己耐性機構や菌体外分泌機構の詳細を明らかにする。とくに、環状バクテリオシンの環化に関わるタンパク質の同定を試みる。また、作用機構と自己耐性機構を関連付けながら、その分子機構の解明を試みる。さらに、明らかとなった生合成機構を利用し、新奇抗菌ペプチドの創出を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在、研究室で保有している機器を活用することで、購入予定であった機器が不要となった。また、高額な試薬・消耗品等を要する研究を次年度に行うことにしたため、とくに試薬・消耗品にかかわる物品費等を節約することができた。 博士研究員を雇用し、研究をさらに推進することを計画している。研究の進展だけでなく、若手研究者の育成にも貢献できる。最終年度であることから、研究目標の達成のために多くの試薬・消耗品費が必要となることが予想される。また、研究成果を発表するために、国内外での学会参加のための旅費や論文発表にかかる経費への支出も計画している。
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Research Products
(15 results)