2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24380054
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三上 文三 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40135611)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / タンパク質工学 / タンパク質構造変化 / 食品関連酵素 / 酵素工学 |
Research Abstract |
タンパク質の機能の多くは分子中の可動ループの構造変化によって発現される。本研究では食糧関連酵素としてβ‐アミラーゼ、アルギン酸リアーゼ、プロテイングルタミナーゼおよびトランスグルタミナーゼを取り上げ、これらの酵素の可動ループの構造と機能を徹底的に解明し、これらの酵素の機能解析と新機能酵素の設計を行うことを目的としている。平成25年度の研究によって以下のような成果を得た。 1.β-アミラーゼの活性部位の内側に存在する5残基から成るインナーループ上の変異体(T342V、T342S、T342A)の結晶を用いて、ループの構造変化とマルトース結合のマルトース濃度依存性を高分解能構造解析によって明らかにした。その結果、T342VとT342Sではインナーループはそれぞれプロダクト型とアポ型に固定され、T342Aでは両方の構造が共存していることを見出した。また、T342Vではサブサイト-1に結合しているグルコースの環構造は野生型と同様にボート型であるのに対して、T342SとT342Aでは歪みの無いイス型の構造をとっていること、推定したサブサイト-2と-1に結合するマルトースの親和力はT342Vにおいて低下していることから、インナーループの構造変化は触媒反応と生成物の酵素からの遊離に重要であることを明らかにした。 2.プロテイングルタミナーゼについてはプロ酵素のループ上のAla46を生成物型であるGlu46に変異した酵素を用いて、Glnに置換した場合と同様に基質のミカエリス複合体とS-アシル中間体の構造を決定し、本酵素の触媒反応過程の全貌を明らかにすることができた。3.トランスグルタミナーゼについてはプロ酵素のN末端24残基の阻害ヘリックス部分を化学合成し、成熟体との複合体の結晶構造解析を行い、阻害へリックスがプロ型と同様に本酵素に結合していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
β-アミラーゼ、プロテイングルタミナーゼおよびトランスグルタミナーゼの研究において以下のような成果を得ることができた。 1.β-アミラーゼの活性部位の内側に存在する4残基から成るインナーループのループ上の各変異体(T342V、T342S、T342A)のマルトース濃度を変化させた実験から、インナーループの機能についての新しい知見を得ることができた。特に、T342Sの変異体ではインナーループがアポ型に固定されているにも拘わらず、野生型と同様のLys295の側鎖の構造変化が観測できたことから酵素反応においてLys295の構造変化がインナーループよりも先に生じることが推定された。また、K295Aとマルトース複合体の構造解析から、Lys295がサブサイト-1の重要な残基であると同時に2つの触媒残基(Glu186とGlu380)をそれぞれ構造変化の前後で安定化する役割があることが推定された。 2.プロテイングルタミナーゼについてはプロ酵素のループ上のAla46をGluとAsnに置換した変異体の構造解析によって、活性ポケット内での酵素反応は可逆的であり、溶液中のアンモニアイオン濃度と活性ポケット入口の残基(Asp54、Ser289、Tyr196等)が、本酵素の特異性を決定しているこが明らかになり、本酵素の機能改変に有力な知見を与えた。 3.トランスグルタミナーゼについてはプロ酵素のN末端24残基のペプチドが本酵素反応を阻害し、それは成熟体と複合体を形成するためであり、このペプチド酵素複合体の結晶構造解析を行って24残基のペプチドはプロ酵素と同様の構造をとっていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.β-アミラーゼについては平成25年度に結晶母液のpHを変化させた結晶の構造解析を行ったが、凍結結晶の測定ではpH変化に対応する構造変化は認められなかった。これは凍結によってpHが変化することとpHによる変化が個々の結晶の凍結による変化よりも小さいことを示している。そこで、β-アミラーゼとマルトース複合体の非凍結状態での構造解析をできるだけ高分解能で行うために、より大きな結晶を調製し、その回折データの測定を実験室の装置で行うことを計画する。また、平成25年度で得られたインナーループの構造変化の結果を受けて、その構造変化のメカニズムをより詳細に検討するために、各変異体(T342V、T342S、T342A)の計算機シュミレーションを行い、そのインナーループの構造変化に要する時間等を検討する。活性に必要と考えられるサブサイト-2に結合するグルコースの環構造の歪みの意義を解明するために各β-アミラーゼの変異体とマルトトライオースとの複合体結晶の回折データの測定をスプリング8で行う。 2.プロテイングルタミナーゼの性ポケット入口の残基、特にAsp54の変異体、D54Nを調製し、その酵素活性を野生型と比較して、D54Nが逆反応を促進するかどうか検討する。 3.トランスグルタミナーゼについては、プロ酵素のN末端の24残基のペプチドよりも短いペプチドを用いた実験を行い、24残基中で活性阻害に重要な部分を特定する。これらの実験によって得られた知見から、本酵素の安定化に役立つペプチドを設計する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に予定しているデテクターガス交換費用の一部を確保するため 本年10月にデテクターガス交換(85万円)を予定している。
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Research Products
(7 results)