2013 Fiscal Year Annual Research Report
ミツバチのカースト分化におけるエピッジェネティック制御機構の解析
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24380059
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
鎌倉 昌樹 富山県立大学, 工学部, 講師 (60363876)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / ミツバチ / ショウジョウバエ / ロイヤラクチン / カースト分化 |
Research Abstract |
1.女王蜂の発生期間短縮機構の解析 女王蜂は、働き蜂に比べて体サイズが1.5倍以上あるにも関わらず、発生期間が短く早く羽化する。通常、生物個体において大きい個体は遅く羽化し、小さい個体は早く羽化するが、女王蜂は一般的な生物の法則に反している。本申請者は、これまでにロイヤラクチンあるいはローヤルゼリー(RJ)が、ショウジョウバエに発生期間の短縮化をはじめとた女王蜂様の表現型を誘導することを明らかにしている。さらに、女王蜂の発生期間の短縮化に関与する因子を探索した結果、DHR38或いはDHR38のミツバチのオルソログであるHR38がミツバチのカースト分化における発生期間の短縮化を誘導する重要な因子であることも明らかにしている。本年度はさらに女王蜂における発生期間の短縮化のメカニズムの解析を行った。その結果、発生期間の短縮化にかかわるDHR38の発現は唾液腺に限られていることが分かった。また、Gal4/UASシステムにて唾液腺だけでDHR38を発現させた場合に発生期間の短縮化が見られた。これらの結果から、HR38が昆虫の発生期間を制御する重要な因子であることが明らかになった。 2、女王蜂の寿命制御機構の解析 ロイヤラクチンをショウジョウバエの脂肪体で強制発現させると個体の寿命が延長する。脂肪体でロイヤラクチンを発現させた系統(ppl>royalactin)とコントロール系統(UAS-royalactin)の間での3齢幼虫(孵化後6日目)におけるクロマチン修飾の違いをヒストンH3と H4のメチル化、アセチル化抗体(14種類)を用いて解析した。その結果、脂肪体でロイヤラクチンを発現させた系統においてコントロールに比べH3K4のメチル化とH4R3のメチル化が抑制されていた。これらのメチル化部位は、メチル化抑制によりヘテロクロマチンになることから、寿命制御に関与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミツバチのヒストンのメチル化、アセチル化を解析するための組織切片を用いた組織化学的解析法を確立することに時間を要しており、計画よりやや遅れている。また、ミツバチのDNAのメチル化の解析を行うため次世代シークエンサーを用いた解析の体制整備にも時間を要した。しかし、現在までに基礎生物学研究所と共同で次世代シークエンサーを用いたミツバチのDNAメチル化を解析できる体制も整っている。今後は確立したミツバチのヒストンメチル化の組織化学的解析法を用いて、ロイヤラクチンによるミツバチのヒストン修飾の制御機構を解析し、さらに次世代シークエンサーを用いて女王蜂と働き蜂の間のDNAメチル化の違いを解析して行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.女王蜂の発生期間短縮機構の解析 現在、DHR38の下流で発生期間の短縮化に関与する実行因子、特に唾液腺から分泌されている発生期間を制御する液性因子をマイクロアレイなどを用いて解析しているが、本年度はさらに詳細なメカニズムの解析を実施する。これまでに昆虫の脱皮の全貌はあきらかになっておらず、唾液腺から分泌されている発生期間を制御する液性因子を中心として脱皮の原理を明らかにできれば、これまでにない新たな発見となる。 2、女王蜂の寿命制御機構の解析 寿命延長には、ヘテロクロマチン化が重要であることが明らかになっている。ヘテロクロマチン化には、ヒストンのメチル化やアセチル化が関与している。本年度は、女王蜂と働き蜂の間のヒストン修飾の違いを解析し、寿命に関与するクロマチン修飾について解析を実施する。さらに、次世代シークエンサーを用いたRNA-seq解析により、働き蜂の幼虫と女王蜂の幼虫間の遺伝子発現の違いを解析した結果、女王蜂が働き蜂に比べヘテロクロマチン化に関与するsirt6やsirt4の遺伝子発現が増加していた。この結果はリアルタイムPCRでも見られた。これらの結果から、ミツバチのヒストンのアセチル化の抑制が、女王蜂の寿命増加に関与している可能性が示唆された。本年度はこれらの因子がミツバチのクロマチン修飾や寿命に及ぼす影響について解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ミツバチのヒストンのメチル化、アセチル化を解析するための組織切片を用いた組織化学的解析法を確立することに時間を要しており、計画よりやや遅れており、その分の支出が減少した。また、ミツバチのDNAのメチル化の解析を行うため次世代シークエンサーを用いた解析の体制整備にも時間を要した。次世代シークエンサーを用いた解析の部分が本年度達成できず、来年度実施することとなり、基金助成金分を次年度に繰り越すこととなった。 現在までに基礎生物学研究所と共同で次世代シークエンサーを用いたミツバチのDNAメチル化を解析できる体制が整っている。今後は現在確立しているミツバチのヒストンメチル化の組織化学的解析法を用いて、ミツバチのヒストン修飾の制御機構を解析し、さらに次世代シークエンサーを用いて女王蜂と働き蜂の間のDNAメチル化の違いを解析して行く予定である。
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Research Products
(15 results)