2013 Fiscal Year Annual Research Report
タンニンと糖を用いた安全・安心な木材接着技術の開発
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24380094
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅村 研二 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (70378909)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川井 秀一 京都大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00135609)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | タンニン / スクロース / 天然接着剤 / パーティクルボード |
Research Abstract |
昨年度は、木質成形体の作成によって基本的な接着条件や接着性能を明らかにした。今年度は、その結果に基づいて汎用のパーティクルボードの試作を行った。特に、タンニンと糖の混合比率、ボードへの添加率、マット含水率がボード物性に与える影響について検討した。 【実験方法】 昨年度と同様のワットルタンニンとスクロースを原料とし、所定の割合(5水準)で水に溶かして濃度40%の混合溶液を調製した。この混合溶液を接着剤として、固形分で10~40%の範囲で木材チップに噴霧塗布した。塗布した木材チップは含水率が高くなるため、乾燥処理の有無が物性に及ぼす影響についても検討した。ボードサイズは30×30×9mm、目標密度0.8g/cm3、プレス条件は、200℃、10分とした。得られたボードの物性評価はJISに準拠した曲げ試験、剥離試験、吸水厚さ膨張率試験の他、促進劣化試験を行った。比較としてpMDIによるボードも作成した。また、混合溶液をオーブンで加熱処理し、得られた硬化物の化学構造をFT-IR測定によって解析した。 【結果と考察】 マット含水率およびタンニンとスクロースの添加割合を調べた結果、マット含水率が高い状態(38~42%)で作成したボードは添加割合に関わらず曲げ強度やはく離強度が低く、厚さ膨潤率も高い結果となった。一方、乾燥処理によりマット含水率を低くした場合(3~6%)は、スクロースの添加割合が大きいほど高いボード性能を示し、最適なタンニン/スクロース比は25/75であることが分かった。次に、接着剤添加率がボード物性に及ぼす影響を調べた結果、30~40%の添加で優れた物性を示し、pMDIでの物性には及ばないものの、力学性能についてはJISに規程される構造用ボードの基準値を満たす結果となった。FT-IRの結果、スクロースは加熱によってフラン化合物となり、タンニンと反応することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画では、パーティクルボードの試作と接着剤の硬化メカニズムの解明を行うこととしている。実際には、接着成分の添加割合やボードへの添加率、さらにマット含水率がボード物性に及ぼす影響を明らかにし、基本的な製造条件の一部を明らかにした。また昨年度に続きFT-IRによる解析を行い、硬化メカニズムの推定を行うことが出来た。ただし、他の機器分析による解析は時間の都合上、来年度に行うこととした。以上、硬化メカニズムの解析に関して若干持ち越しがあるものの、ほぼ計画通りに進んでいることから、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、熱圧温度や目標密度がボード物性に及ぼす影響を検討し、更なる最適製造条件の確立に向けた取り組みを行う。また、硬化メカニズムの解明では、各種機器分析を用いて多角的な解析を進める。 これまで研究分担者として参画してきた川井教授が多忙のために連携研究者として参画することになるが、これまでの研究の経緯から十分対応できると考える。実験は主に大学院生と協同で取り組み、必要に応じてアルバイトによる補助を検討する。物性試験や機器分析に関し、有効かつ必要とされる備品があれば、前年度から繰り越した基金を使い購入することを検討する。現在のところ、レオメータが接着剤の硬化特性を明らかにする上で有効ではないかと考えている。来年度は最終年度となるので、国際学会での発表を積極的に行うとともに、論文の国際誌への投稿を加速させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、パーティクルボードの基礎的製造条件を把握するために、諸条件を変えてボードを作成し、その物性評価を行うとともに、FT-IRによる化学構造解析を行った。これらの実験で必要とされる大型機器は既に整備されており、必要経費は主に消耗品に相当するものが多く、結果的に基金の繰り越しを行う事となった。 次年度は本課題の最終年度であり、ボードの最適製造条件の確立に加え、接着剤の詳細な硬化特性の解明を進める予定である。硬化特性の解明では各種機器分析による化学的、物理的側面からの多角的な解析を予定している。しかし、当研究室では物性的な側面から硬化挙動を把握するための機器分析が不足している。そこで、フローテスターなど熱流動特性を測定する機器の導入を検討している。ただし、導入にあたっては事前の予備調査を十分行った上で判断する。本接着剤の解析が困難であると判明した場合には、他の分析機器の導入や専門機関への試験依頼など、研究に効率的かつ有効な方法を検討する。
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Research Products
(2 results)