2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24380102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊池 潔 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (20292790)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 性決定 / 生殖 / 遺伝 / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
動物の性決定遺伝子は典型的な有用遺伝子であるが、水産分野では遺伝子本体の同定例がなかった。本研究では、水産魚類では初めてとなる性決定遺伝子の解明に迫る。 1.トラフグの性決定遺伝子本体の遺伝学的な同定。関連解析の材料とするため、野生トラフグを採取した。これらの性決定遺伝子座周辺における連鎖不平衡の構造を解析したところ、その連鎖不平衡ブロックが著しく短いことを見出した。性決定遺伝子座を含むゲノム領域に、高密度に一塩基多型座マーカーを開発し、遺伝子型と性の表現型との関連を野生個体について調べたところ、抗ミュラー管ホルモンII型受容体(Amhr2)をコードする遺伝子内にオス特異的な一塩基多型を見出した。オスまたはメスに特異的な他の変異サイトは存在しないため、このDNA配列変異が性決定の責任変異であると考えられた。理論的には可能と考えられていたものの、このような性決定遺伝子(変異)の実例はこれまでなかった。大多数の変温脊椎動物動物の性決定遺伝子は未だ不明であるが、その中には、フグと同様に、性染色体のごく僅かな塩基差により性が決まっている種が多数あるのではないかと推測した。 2.性決定遺伝子(Amhr2)の発現時期の特定。卵巣と精巣が形態的な分化を示さない時期から経時的にサンプリングを行い、XX型およびXY型個体におけるAmhr2の発現を調べた。その結果、Amhr2は形態分化以前から発現を開始し、Y染色体由来のmRNAがオスの生殖巣原器で発現していること、X染色体由来のmRNAはオスとメスの生殖巣原器で発現していることが分かった。 3.Amhr2の機能解析。まず、Amhr2のY型アリル配列(約15kb)をクローン化して、それらの全塩基配列を決定した。このクローンをトラフグの受精卵に顕微注入した。トランスジーンを次世代へ伝達する個体を選び出すため、顕微注入したフグの飼育を継続している。 4.性決定遺伝子応用法の確立。マーカーアシスト選抜を用いて、YY型の選抜と育成をおこなった。これの精子をXX型の卵と受精させて得られた子供を育成して生殖巣を調べた。その結果、すべての子供が雄であることが分かった。トラフグの精巣は、食品としての価値が高いが、これまで、全オス作出法は確立していなかった。本研究により、性決定遺伝子の同定という基礎研究の成果が応用的成果に結びついた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
トラフグの性決定遺伝子は抗ミュラー管ホルモンII型受容体である可能性が非常に高いことを見出した。さらに、野生個体を利用した超高精度関連解析により、性染色体の雌雄差が1塩基のみであることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度研究では、新規性決定遺伝子(抗ミュラー管ホルモンII型受容体抗)の発見に成功した。今後は、当初の計画を推し進めると共に、この発見が契機となる新たな展開も追求する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
性決定遺伝子の同定には、通常、非組み換え領域のDNA配列決定に膨大な費用が必要となる。本研究もその費用を計上していたが、フグの性決定遺伝子は組み換えを起こす領域に存在していたため、比較的安価に解析を遂行できた。本年度の発見を基にした研究を迅速に展開するため、研究補助の雇用等に使用する。
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Research Products
(22 results)