2013 Fiscal Year Annual Research Report
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24380103
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古谷 研 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30143548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大竹 二雄 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (20160525)
加戸 隆介 北里大学, 水産学部, 教授 (40161137)
奥村 誠一 北里大学, 水産学部, 准教授 (60224169)
安達 貴浩 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (50325502)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 三陸内湾域 / 無給餌養殖 |
Research Abstract |
大槌湾におけるフィールド観測をもとに、底質に有機物含量、マナマコの成長解析、モデル解析について以下の成果を得た。平成25年8月~9月に大槌湾の4定点における海洋環境および水質、底泥(AVS(全硫化物)、IL(強熱減量)、COD(化学的酸素要求量)、底生生物)を調査した。養殖域と養殖施設から距離のある海域を比較すると、後者では昨年度同様AVS、IL、CODのいずれもが前者より低かった。一方、ホタテ養殖域ではIL、CODともに観測した中では最も高く、この地点では震災後、IL、CODともに漸増する傾向が認められ、ホタテガイの糞などの沈降による底質への有機物負荷が進行していることが示唆された。一方、底泥中のAVSはカキ養殖域で最も高かった。以上から、貝類養殖により底泥の有機物負荷は震災後増加傾向にあると判断された。なお、何れの地点もDOは7mg/Lを下回ることはなく、湾内外の海水交換により酸素の供給が十分であることが示唆され、数値シミュレーションによってこれが確認された。数値モデルの改良については、ホタテ養殖域における底泥の酸素消費メカニズムの理解および河川流量の組み込みについて進展した。 平成24年11月に生後6か月のマナマコを養殖籠3基に収容し、カキ・ホタテガイ養殖棚下(試験区)および非養殖筏下(対照区)に設置し、成長を追跡した。各群とも、平成25年5月までの成長度は極めて高かったが、その後9月まで顕著な低下を示した。しかしその後は、本年度3月まで体重が増え続け、前年度3月時の体重にまで回復した。これらの結果から、春先から初夏にかけての植物プランクトンの増殖が二枚貝類の排泄物を増加させ、そのことがナマコの成長度を高めたこと、および夏から秋にかけて、植物プランクトンの減少と水温上昇によるナマコの代謝の低下が、体重の急激な減少を招いたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現場観測を当初の予定通り実施し、順調に試料の収集、データの解析が進んでいる。養殖域の物質循環を解析するための物理ー生態系モデルの改良も順調に進んでいる。とくに、これまで当該海域における栄養塩動態において大きな不確定要素であった河川流入についての解析が進んだ。すなわち、大槌周辺河川において水位計を設置し,比較的降水量の多い期間において,河川流量観測を実施し、得られた結果に基づいて,大槌湾周辺河川における河川流量や栄養塩負荷の時系列を推定した。この結果,構築した手法は,2013年度だけでなく,過去,不定期に観測されている流量や栄養塩負荷の時系列も精度良く推定できることが明らかとなった。最終年度である次年度には、モデル解析によって大槌湾の貝類養殖の環境収容力の評価が達成できる見込みが十分にあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、最終年度であることから、これまでに得られた現場観測データの品質検査を行い、それらを改良した物理ー生態系モデルへ適用して、現在の大槌湾の貝類養殖の環境収容力評価を行う。その結果を、震災以前に得た環境収容力と比較して、大槌湾の貝類養殖について震災/津波の影響について解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に採取した試料の一部の分析が残っているため、そのための費用を次年度に使用する。計画に大きな変更はない。 次年度の4~6月に分析をすべて終了する予定である。
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