2013 Fiscal Year Annual Research Report
軟体動物前鰓類におけるレチノイン酸受容体(RAR)の性状及び生理機能解析
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24380110
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
堀口 敏宏 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 室長 (30260186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 康彦 鳥取大学, 農学部, 教授 (60069078)
森下 文浩 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20210164)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 軟体動物 / 前鰓類 / レチノイン酸受容体(RAR) / レチノイドX受容体(RXR) / インポセックス |
Research Abstract |
イボニシ腎臓及びペニスより抽出したRNAからRAR様配列(イボニシRAR)を単離した。この遺伝子のアミノ酸配列の比較より、今回得られた配列は脊椎動物のRARと相同性が比較的高いことが分かった。この配列を用い、ミドリザルの腎臓由来の細胞に導入し、All-trans レチノイン酸(ATRA)添加時のウエスタンブロットによるタンパク発現の確認と転写活性の測定を行った。イボニシRARタンパクの発現は確認できたが、転写活性の誘導は認められなかった。そこで導入細胞をヒト肝臓由来の細胞に変更し、イボニシRARとヒトRARα、β、γとを用い、二種類のレチノイン酸応答配列を用いた時の転写活性の測定を行った。ヒトRARでは転写活性の誘導が認められたが、イボニシRARでは誘導は認められなかった。この原因を探るため、イボニシRAR及びヒトRARαのリガンド結合部位をGAL4 DNA結合部位と融合させ、転写活性の測定を行った。ヒトRARαリガンド結合部位を用いたアッセイではATRA, 9-cis レチノイン酸, 13-cis レチノイン酸, All-trans レチノール添加時に転写活性の誘導が認められたが、イボニシRARでは何れの化学物質添加時でも誘導は認められなかった。次にイボニシRARのDNA結合部位をヒトRARαリガンド結合部位と融合させ、転写活性の測定を行ったところ、転写活性の誘導が認められた。さらに、Two Hybrid Assay法によりイボニシRARとイボニシRXRとの相互作用の有無を調べた結果、RARはRXRが存在する場合に転写活性が誘導され、イボニシRARとRXRとの相互作用があると考えられた。以上の結果を論文にまとめ、公表した (Aquatic Toxicology, 2013, 142-3: 403-13)。一方、有機スズ化合物によるインポセックス誘導について、作用する有機スズの化学種に種差が示唆されている。そこで、イボニシ、ヨーロッパチヂミボラ及びバイの3種類の前鰓類のRXRを用いて、転写活性の比較を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イボニシRARの性状及び機能解析の結果を取りまとめた論文が公表され、また、有機スズの化学種別の転写活性能比較も順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
さまざまな有機スズ化合物によるRXRの転写活性能を前鰓類の代表種(イボニシ、バイ及びヨーロッパチヂミボラ)を用いて比較し、種差について取りまとめるとともに、生殖腺を中心としたイボニシの軟組織におけるRAR及びRXRの局在を、現在までに得られているRXR及びRARのcDNAを鋳型とし、DIG標識されたプローブを作成し、in situ hybridization 法により調べる。また、これまでに、昆虫や甲殻類においてTBTがエクジソン受容体の活性などに影響を及ぼすなどの報告がなされており、エクジソン受容体はRXR受容体やUSP受容体のヘテロパートナーであることが知られているが、現在までに軟体動物においてエクジソンの役割は明らかとなっておらず、不明な部分が多い。そこで、イボニシのペニス及び腎臓組織のRNAを用いて、昆虫類エクジソン受容体様タンパクの単離を図るとともに、RXRとのヘテロダイマー形成可能性を、ほ乳類のTwo Hybrid Assay法により検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イボニシにおけるエクジソン様受容体の単離及び性状決定に関する実験において困難な部分があり、一部の実験が遅延したため。 イボニシにおけるエクジソン様受容体の単離及び性状決定に関する実験において一部遅延した実験を次年度に行い、補完する予定である。
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Research Products
(3 results)