2012 Fiscal Year Annual Research Report
アジア農業金融研究のパラダイム転換に向けて―農村社会構造に着目した比較地域分析
Project/Area Number |
24380124
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 幸一 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (80272441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 昭彦 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (20176960)
坂下 明彦 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (70170595)
三重野 文晴 京都大学, 東南アジア研究所, 准教授 (40272786)
坂根 嘉弘 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (00183046)
柳澤 雅之 京都大学, 地域研究統合情報センター, 准教授 (80314269)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 農業金融 / パラダイム転換 / 農村社会構造 / 地域間比較 |
Research Abstract |
初年度の平成24年度は、ベトナム・紅河デルタ農村で数名のメンバー共同の調査研究を実施したほか、各自担当の研究をそれぞれ推進した。ベトナム・紅河デルタ農村では、集落内住民間の集落を単位とする地縁的なタイトな社会関係があり、その上に密度の濃い行政制度がかぶさっており、結果として非常にまとまりのある農村社会構造が存在していることが明らかになった。その結果、金融面においては、社会政策銀行の融資や返済は全面的に集落機能に依存して行われており、また農業銀行も個別に融資・返済を行うものの、契約履行に際しては集落機能に依存する側面が強く見られた。また、NGOの行うマイクロクレジットについては、NGOの役割は資金供与にほぼ限られ、実際の貸付・返済の業務は集落が行う体制となっていた。以上のような農村金融のあり方は、日本のそれとかなり類似するものであり、日本とベトナム・紅河デルタの農村社会構造がかなり似たものであることを示している。 一方、ラオスでは、1990年代末以降に設立され発展している農村信用組合があり、村(Ban)を単位とした信用組合がかなりよく機能しており、それは所有・経営規模がかなり均質な自作農を中心とする農村社会構造の特質を反映したものと考えらえるが、しかし信用組合の役員にかなり高額の手当を支給しなければ運営が難しく、したがって借入金の金利が月利3~4%の高利になってしまうことからすると、その農村社会構造は日本や紅河デルタのそれとははっきりと区別される。ラオスでは、農村の社会関係はかなりタイトだが、行政がそれを利用し強化するような密接な働きかけが弱い。その点で全く異なった発展径路をたどってきたと考えられる。 平成25年度以降は、東南アジアでは一般にベトナム紅河デルタと並んで強い農村組織をもつとされるインドネシア・ジャワのその農村社会の性格を金融を通してみることで明らかにすることに1つの力点を置くことにする。また、ラオスやタイとの比較でミャンマーにも注目される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アジアの農村社会構造を比較するに当たって、事前に最も注目されたのはベトナム・紅河デルタであったが、そこでの調査研究はかなりの成功裡に終わり、大きな前進があったと評価できる。今後は、ベトナムをより掘り下げて考察すると同時に、他の地域でもフィールド調査を行い、比較の材料をなるべく多く揃えていけば、所期の目的は達せられる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
注目度が高い国・地域について先行的に研究を進めて見通しを早めにつけるとともに、各メンバーの担当地域での地道な調査研究をもうしばらく続ける。平成25年度の終了前に一度中間成果報告のための研究会を開催し、全体の見通しを明らかにし、平成26年度以降の農村金融の「パラダイム転換」のための作業へとつなげていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰越額は比較的少額であり、それは主に分担者の三重野文晴氏個人のやむを得ざるスケジュール上の都合によるものである。三重野氏は平成25年度にはラオス研究をしっかり進める予定であり、したがって全体としては特に計画に変更などはない。
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Research Products
(6 results)