2014 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギーを自給する農山村とエネルギー・リローカル化の計画・設計手法の開発
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24380129
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
小林 久 茨城大学, 農学部, 教授 (80292481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩渕 和則 北海道大学, 農学研究院, 教授 (00193764)
田村 誠 茨城大学, 地球変動適応科学研究機関, 准教授 (10376585)
後藤 眞宏 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所, 研究員 (20370596)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 再生可能エネルギー / 分散型エネルギーシステム / 需給協調 / 地域コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
計画した研究内容に対して,以下のような成果を得た。 ①需要モデル作成:聞き取り調査,収集資料,計測結果などを参考に,冬期,中間期,夏期の農村地域の用途別家庭エネルギー需要モデル(調査対象地用)を作成した。ただし,モデルに対する専門家意見は聞けなかった。 ②ポテンシャル・需要評価:太陽光発電(PV)と小水力を電源,太陽熱と木質バイオマスを熱源とする開発シナリオの実現性が高いことを示し,エネルギー自立の成立可能範囲を再生可能エネルギーの供給可能量/需要量および両者のバランス(エネルギー需給充足)分布図を作成することで明らかにした。また,中山間地集落の小規模な農業用水路において、小水力開発に取り組む地域住民の合意プロセスに関する事例調査を実施し,地区活動を決定する組織と地区財産を管理する組織があり,開発の合意形成には地域の意志決定メカニズム確認の必要性が示された。 ③エネルギー需給マッチング技術:農業活動として家畜飼養を対象にバイオガス発電による電力自給・供給型畜舎の構築に取り組み,消費電力は機器の定格消費電力よりも,機器の使用時間の影響が大きく,使用時間を調整できる機器の運用見直しが,消費電力低減化に繋がることを明らかにした。また,バイオガス発電による電力供給が比較的容易であることを示し,搾乳時の機器運用が電力自給において重要であるとした。 ④需給協調システム検討:電力需給へのデマンドレスポンス(DR)導入可能性を停電受入と受入費用に関するアンケート調査から検討し,1世帯2万円を支払えば全世帯の50%がDR(30分*3回)に参加するなど,条件別の導入可能性を示した。さらに,東電管内の電力負荷曲線と発電コストの比較から、電力負荷の最も高い年間5時間ほどは発電単価の高いピーク電力供給を行うよりも、参加者へ停電受入費用を支払ってDRにより需要を減らす方が経済的の妥当であること示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象地区を選定し,協力体制を整備した上で,現地調査に基づく積み上げ型のエネルギー開発・需給計画を作成し,エネルギーの自給可能性を明らかにするという当初計画の研究の枠組みにしたがった成果が得られていると考えられる。また,エネルギー自給が可能な領域の把握,家庭と畜産における電力需要を例に分散型電力システム検討における需要側対応の有益性などを明らかにすることで,目標としていたエネルギーを自給する農山村の姿を提案できるようになった。しかし,電力自由化にともなう取引市場の具体的検討など,エネルギー政策や社会事情が急速に変化しているため,収集した分散型エネルギーシステムに関する事例等がすでに陳腐化するなど,想定していた「自給型エネルギー需給」に関する視点を組み直すことが必要になりつつある。今後は,このような制度・社会情勢の変化も視野に入れて研究成果の有効活用方法を考える必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
残された期間が1年となるので,今後は,代表,分担それぞれの研究成果のうち,とくに有益と考えられる研究成果を中心に,共同研究者間で活用・適用方法などを検討し,公開を前提としたとりまとめを行う。 現時点では,それぞれの研究参画者が以下のような方針で,追加調査・分析等を実施した上で,成果とりまとめを行うこととする。 ①小林:農山村の家庭エネルギー需要特性と自給可能性を明らかにし,集落や地域コミュニティレベルの自給型エネルギー需給に関する具体的イメージを提案して再生可能エネルギー資源活用による農山村社会像を示す。さらに,地域エネルギー事業による農山村再生の可能性と道筋について考察する。 ②田村:需要側対応(デマンドレスポンス)による経済的メリットと有益性を分散型エネルギーシステムへの導入可能性とともに,整理する。 ③後藤:農山村地域において,整備蓄積してきた地域インフラといえる農業水利施設を活かした再生可能エネルギー生産の方策を提案する。 ④岩淵:農業活動におけるエネルギーの効率的利用を,機器の特性や使用方法などから考察し,とくにバイオガス発電によるエネルギー供給で運用する家畜飼養施設の枠組みを提案する。
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Causes of Carryover |
旅費,人件費の支出が計画より大幅に少なくなり,繰越が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計測機器には,部品交換,修理等を要すものが残っているので,まずこれら修理調整費に使用する。残りは,旅費,人件費に充てる予定である。
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