Research Abstract |
地盤の浸透破壊は,近年,農業用水利施設の改修・更新,土木工事の大規模化・大深度化に伴って新たな問題を引き起こし緊急に解決すべき課題となっている。本研究は,まず,流れの条件(一次元流,二次元流,二次元集中流,軸対称流,三次元流)を基本的視点として整理し,種々のケースについて実験を行い破壊メカニズムの解明を試みる。次に,実験成果に基づいたPrismatic failureの考え方を用いて,種々の流れ条件の地盤について浸透破壊に対する安定性評価を行う。そして,地盤の浸透破壊に対する限界水頭差の無次元化について考察を進め,実地盤の事例解析結果を踏まえながら,浸透破壊問題について総合的評価を行う。このように,本研究は,実験的・理論的観点から,実地盤の事例研究を踏まえながら,浸透破壊理論を体系的に構築しようとするものである。 実際には,次のようなテーマについて,順を追って系統的に研究を実施してゆくことを計画している。「大型一次元浸透破壊実験装置の試作と実験」,「種々の流れ条件におけるPrismahc failureの考え方の妥当性評価」,「二次元実験地盤の1/2模型である小型二次元浸透破壊実験の実施」,「新規課題である異温度流体(温水と冷水)による浸透破壊特性の解明」,「実際に現場で発生した浸透破壊事例の浸透流解析及び浸透破壊安定解析」,「浸透破壊理論Originaland Extended Prismatic failure conceptの検証」,「本研究で得られた成果の総合的評価と公表」,「地盤浸透破壊に関する書籍の執筆にむけての準備」 本年度は,まず,種々の流れ条件(一次元流,二次元流,二次元集中流,軸対称流,三次元流)における一連の浸透破壊実験について結果を整理し,研究代表者らが提案するPrismatic failureの考え方について妥当性の評価を行った。次に,三次元浸透破壊実験,及び,小型二次元浸透破壊実験を実施した。そして,大型一次元浸透破壊実験装置一式を試作し,基礎実験の実施を行うとともに,上昇浸透流のある地盤の支持力試験に向けて準備を行っているところである。三次元浸透破壊問題については,本年度,全ケースの実験が終了し,研究成果を国内学会(東京にて)及び国際学会(パリ,フランスにて)に投稿し9月に発表の予定である。 小型二次元浸透破壊問題では,掘削なし及びありの地盤について,限界水頭差の理論解析を行い実験的に検証を行った。引き続き,Scale効果,押えフィルターの効果,疑似異方透水性地盤の浸透破壊安定性について考察を進めているところである。
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