2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24380133
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
小林 晃 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (80261460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 清仁 岩手大学, 農学部, 准教授 (60362430)
木山 正一 京都大学, 農学部, 助教 (20293920)
安室 喜弘 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (50335478)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 維持管理 / 事業継続 / 水利施設 / パイプライン / ダム / 地震時挙動 / リスク管理 / アセットマネジメント |
Research Abstract |
本研究は,地震や洪水などによる自然災害被災後の事業継続計画を考慮した,農業水利施設のアセットマネジメント手法を開発することを目的としている. 滋賀県において調査された大規模弾性波探査結果による地盤モデルと近隣断層の直下型地震モデルと3連動プレート境界地震モデルを用いて、当該地区のパイプラインシステムの振動解析を実施し、2つの地震の解析結果より大きな応力と軸方向相対変位が発生する箇所を求めた。そして、発生応力の大きい順に取り替えを行い、相対変位の大きい順に継目内面バンドを施すというアセットマネジメント計画を立てた。設定した年間予算でそれぞれの補修を順次行うことにより本システムの場合、地震に対する安全率が約20年後に急激に上昇することが分かった。 アースダムの堤体の現状把握を弾性波、電磁波、電気探査の複数の検査結果を自己組織化マップを用いて検査する手法の開発を行い現地に適応した。その結果、非破壊調査で内部の異常箇所を抽出できる可能性を示した。さらに、アースダムの地震時における天端軸方向亀裂の発生メカニズムを実験および解析によって調査し、引張亀裂が要因であることを示した。これにより、地震後の補修計画、耐震補強計画を的確に行える可能性を示した。 コンクリートダムの地震時に発生する継ぎ目部の漏水のメカニズムを3次元振動解析を行い検討した。その結果、軸方向からの入力に対しては最大断面の横継目に生じる大きなせん断応力によるダイレイタンシー挙動が漏水の主要因であり,上下流方向からの入力では両岸付近の縦継目の開口と横継目のせん断挙動により漏水が発生することが分かった。これにより震災補修を適切に行うことが可能となった。 パイプラインの内部形状を3Dカメラおよび1Dレーザー変位計を用いて測定する手法を開発し現地に適応した。そして3Dレーザー変位計計測結果と比較し、開発手法の有効性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
滋賀県姉川地区におけるパイプライン施設の地震リスクを考慮したアセットマネジメント計画法を提案した。 岩手県陸前高田におけるため池および農地の塩分濃度の低下経緯の計測を実施し、不飽和部における吸着現象の可能性を数値解析で検討するなど、経験の少ない事象に対するメカニズムの解明を行った。 また、提案したパイプラインの形状測定法を現地で適用し、有効性とともに課題も抽出した。 アースダムおよびコンクリートダムの被害の中心となっている故障原因の解明を行った。詳細なメカニズムの解明に関しては課題があるが、本成果により最適な対策立案が可能となった。 以上のように交付申請書に記載した研究項目は概ね予定通り終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究で、パイプライン、アース・フィルダム、コンクリートダムの地震災害の損傷メカニズムと損傷個所を概ね把握できた。 事業継続のためには、その予測損傷個所にメカニズムに適応した補修を事前に行い予防保全に勤めること。そして、予想外の箇所に損傷が生じた場合の代替施設の準備・設置を維持管理計画に入れることが必要である。しかし、農業水利施設の場合、そのような予防保全を含めた危機管理における費用も利用者負担があり経済的制約が大きい。そこで、最適な維持管理手法の選択が必要となるが、今後の研究推進に当たっては、様々な対応策にかかる費用と効果を調査し、最も便益の大きい維持管理手法の選択を検討する。 また、パイプラインの変形観測では、当初計画では自動走行観測装置の開発を目指したが、昨年実地での計測を行った際、パイプの中の照明設置の困難さと水を落としても底部にはいくらかの水深があることなど制約条件が大きいことが分かった。そこで、本年度は測定する位置と測定方向を正確に把握して補正する手法の開発を行う。この技術により不規則に測定位置が変化しても計測が可能となる。 陸前高田の農地・ため池堤体の塩水侵入の測定結果と室内実験により土壌の不飽和領域での塩分挙動をモデル化し、実際に行われた塩分除去を解析することにより、効果的な土壌の回復作業法を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
自動走行のパイプライン形状測定装置を開発する予定であったが、現地測定を実施した結果、様々な困難が判明した。そのため、今年度の開発は断念し、次年度において、測定位置と方向を正確に把握する手法の開発とそれによる計測結果の補正法の開発に予定を変更した。 位置と方向の測定のためには走行装置と異なる機器が必要であり、その選択と適用法の検討が必要である。そのために今年度の予算消化を取りやめ、次年度において種々の手法を検討した後に最適なシステムを構築することとした。 1)パイプラインの形状測定する装置のパイプ中における向きを正確に測定するための手法をまず検討する。そのために実験を行うが、種々の測定装置の実用性と適用法を工夫する必要があり、そのための機器の購入を行う。 2)次に測定装置の位置を把握する手法の検討を行う。現在種々のGPSアンテナが開発されており、その適用可能性とシステムの構築を行う必要がある。そのための機器の購入を行う。
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