2013 Fiscal Year Annual Research Report
ジアシルグリセロールキナーゼζによる新たな糖尿病発症機構の解明とその解除薬の開発
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24380152
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伯野 史彦 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30282700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 昭博 独立行政法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (40391859)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ジアシルグリセロールキナーゼ / PIP5K / 糖尿病 / インスリン抵抗性 / 糖輸送担体(GLUT4) / 細胞膜移行 |
Research Abstract |
今年度は、DGKζと結合するタンパク質を単離した。そのタンパク質群と、既知のDGKζ結合タンパク質の中から、特にPI4Pの5位をリン酸化する酵素PIP5K1αに注目し研究を行った。PIP5K1αの発現抑制はDGKζの発現抑制と同様にGLUT4の細胞膜移行を抑制した。またPIP5K1αの過剰発現は、DGKζの過剰発現と同様に、インスリンシグナルには大きな影響を与えずにGLUT4の細胞膜移行を促進した。このことから、PIP5K1αはDGKζと協同してGLUT4の細胞膜移行を促進していると考えられた。さらに、DGKζとPIP5K1αの活性は相互に制御し合っており、DGKζとIRS-1との結合を阻害することによって、インスリン刺激非依存的にGLUT4の細胞膜移行が促進され、さらに、PIP5K1αの活性が未知の機構によって促進されていた。さらにインスリン刺激によってDGKζおよびPIP5K1αがIRS-1から遊離することも考え合わせると、インスリン刺激のない基底状態では、IRS-1と結合したDGKζはGLUT4の細胞膜移行を阻害する機能を有しており、この活性によりGLUT4は細胞膜に移行しない。ところが、インスリン刺激によってIRS-1からDGKζが遊離すると、DGKζによるGLUT4の細胞膜移行阻害活性が失われ、さらにDGKζがPIP5K1αを活性化し、その結果GLUT4の細胞膜移行を促進するという分子機構が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた実験計画のうち、DGKζがGLUT4の細胞膜移行を阻害する機構の一部を解明することができた。本年度の実験結果によって、PIP5K1αの活性を促進するような低分子化合物もGLUT4の細胞膜移行を促進する候補となる。さらにDGKζ結合タンパク質の中には、翻訳後修飾に関与するような新規分子が多数含まれていた。今後はこの分子による翻訳後修飾がIRS-1とDGKζの結合に及ぼす影響を調べることによって、新たにIRS-1とDGKζの結合を阻害するような標的分子が明らかになると考えられる。さらに現在IRS-1とDGKζの結合を阻害する候補低分子化合物を21種類同定しており、これらの解析を次年度に行うことによって、抗糖尿病薬の開発に繋がると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果から、DGKζとIRS-1の結合を阻害することでインスリン抵抗性が解除できることを明らかとしたため、今年度はインスリン抵抗性を解除する他のターゲット分子の探索と同時に、DGKζとIRS-1の結合を阻害する低分子化合物の機能解析を中心に研究を進めていきたい。 まず、これまでに同定したDGK結合タンパク質の中から、DGKζに対する翻訳後修飾を行う酵素を同定する。候補酵素の優性阻害変異体や恒常活性化変異体を過剰発現することによって、DGKζとIRSの結合が変化し、GLUT4の細胞膜移行を制御している酵素を絞り込み、修飾酵素として同定する。 さらに、翻訳後修飾の入らないDGKζ変異体、DGKζに対する修飾酵素の活性化型、優性阻害変異体がGLUT4プロモーターの制御下で過剰発現するようなトランスジェニックマウスを作製する。このマウスに耐糖能試験、インスリン負荷試験を行い、インスリン抵抗性に対して耐性を獲得していることを証明する。 これまでの結果から、IRSとDGKζ、DGKζと修飾酵素の結合阻害剤はインスリン抵抗性の解除薬の候補となる。これまでにIRS-1とDGKζの結合を阻害する低分子化合物を同定している。そこで、これと同様な手法を用いて、結合阻害剤を理化学研究所ライブラリーから10種類以上単離する。さらに、3T3-L1脂肪細胞に各種化合物を添加してTNF-αによるインスリン抵抗性が解除されることを指標にさらに絞り込んでいく。さらに、絞り込んだ低分子化合物に関して、ITC(カロリーメーター)やSPR(ビアコア)を用いてKd値を求め、化合物の性能を評価する。さらに類縁体を購入し、より良い化合物を選択する。最適化した化合物が個体レベルでインスリン抵抗性を解除できるか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度行う予定であった低分子化合物の単離を今年度のうちに着手し、また、一方で本年度行う予定であったIRS-1とDGKζの結合を制御する修飾酵素の機能解析については、実際には次年度に持ち越した。それぞれの実験に対してかかる費用の違いによってこのような差額が生じた。 本年度に行わなかった、IRS-1とDGKζの結合を制御する修飾酵素の機能解析をまず初めに行う。さらにこれらの修飾酵素とDGKζの結合を阻害する低分子化合物を単離をその後行い、インスリン抵抗性を解除する新規低分子化合物の同定を試みる。
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Research Products
(15 results)