2012 Fiscal Year Annual Research Report
核内受容体PPARαを用いた臭素系難燃剤のハイスループットリスク評価
Project/Area Number |
24380179
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Shokei Junior College |
Principal Investigator |
石橋 弘志 尚絅大学短期大学部, 食物栄養学科, 准教授 (90403857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有薗 幸司 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (70128148)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 核内受容体 / PPARα / 残留性有機汚染物質 / 臭素系難燃剤 / 環境汚染 / 生態系 / リスク評価 / 遺伝子 |
Research Abstract |
近年、ポリブロモジフェニルエーテル類(PBDEs)などの臭素系難燃剤(BFRs)や一部の有機フッ素化合物(PFCs)が新たに残留性有機汚染物質(POPs)として登録された。しかしながら、BFRsの毒性影響に関する知見は十分でなく、特に食物連鎖の高次に位置する高等動物を対象とした生体影響評価や、その作用機序に関する研究の遂行は最重要課題である。そこで本研究では、BFRsによる汚染が確認されているバイカルアザラシを対象として、脂質代謝などに関与するペルオキシソーム増殖剤応答性受容体 (PPARα)に着目し、BFRsによるPPARα依存的転写活性化能の探索を試みた。LnVitroレポーター遺伝子アッセイ系を用いて、まず野生生物などで汚染が報告されている主要なBFRsについて単一暴露濃度でスクリーニングを行った。結果として、BDE47,BDE99およびBDE153によるPPARaの活性化が見出された。そこでこれら3種のPBDEsについて用量依存性を調査したところ、暴露濃度に依存してPPARαは活性化された。得られた用量反応曲線から半数影響濃度EC50値を算出したところ、BDE47は9.6μM、BDE99は5.9pM、BDE153は4.1pMであり、BDE153は最も強くPPARaを活性化することが明らかとなった。これまで我々の研究グループでは、マウス・ヒトと同様にバイカルアザラシにおいてもPFCsによるPPARα活性化を明らかにしている。そこでペルフルオロオクタン酸(PFOA)によるPPARα活性化能を1として、3種のPBDEsについて比較したところ、BDE153は17倍、BDE99は12倍、BDE47は7.4倍の強い活性化能を示した。本研究はPBDEsによるPPARαの活性化を示した初めての報告である。また、バイカルアザラシPPARαを介したPBDEsの潜在的毒性影響が示唆され、これらの知見はPBDEsのリスク評価においても重要な基礎資料となりうることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで臭素系難燃剤によるPPARαの活性化やPPARαを介した生体影響評価に関する研究は皆無であった。本研究により初めて「臭素系難燃剤によるPPARαシグナル伝達撹乱」という新たな毒性作用機序の一端が明らかとなった。また、これまで報告された有機フッ素化合物によるPPARαの活性化能と比較しても、今回見出された3種の臭素系難燃剤のPPARα活性化能は極めて強いことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
アザラシ以外の野生高等動物PPARαの単離・同定をより一層強化し、in vitroレポーター遺伝子アッセイ系の構築や臭素系難燃剤によるPPARα活性化の測定を実施することで比較生物学的なPPARαシグナル伝達撹乱を指標としたリスク評価手法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の遂行上必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額は異なったが、研究計画の変更はなく、前年度の研究費も含め当初予定通りの研究計画を実施する。
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