2012 Fiscal Year Annual Research Report
発熱植物の呼吸代謝および温度センシング機構に関する研究
Project/Area Number |
24380182
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
伊藤 菊一 岩手大学, 農学部, 教授 (50232434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 洋 岩手大学, 工学部, 教授 (10261463)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発熱植物 / 呼吸制御 / 温度センシング / 細胞機能 |
Research Abstract |
ザゼンソウ群落地にて発熱期にある肉穂花序を対象に、その発熱レベルが異なる発熱組織が得られるよう、人為的に外気温を変化させる条件を設定するなどして、解析に必要なサンプルを調製した。また、非発熱組織である葉や仏炎苞もサンプリングし、RNAを調製した。得られたRNAから、ミトコンドリアのNADH代謝に重要であるType II NADH dehydrogenase(NDA&NDB)のクローニングを行い、それぞれの転写産物の発現を定量的PCRにより解析した。その結果、NDAおよびNDBとも、発熱器官である肉穂花序の小花で特異的に高い発現を示すことが判明した。小花は他の発熱因子と考えられているAOXの高発現が観察される部位であることから、NADHの代謝に関わるalternative経路が熱産生に関連していることが示唆された。また、発熱期の肉穂花序由来のミトコンドリアを用いたNADH呼吸活性を解析した結果、温度変化と関連する可能性のある経路の存在が示唆された。 また、異なる外気温の条件で発熱している肉穂花序から小花とその内側の維管束組織から成る組織を採取し、それぞれの代謝産物量を網羅的に解析した。得られた結果を主成分解析に供した結果、小花における代謝産物の変動が温度変化と密接に関連していることが判明した。上述したように小花由来のミトコンドリアにおいては発熱関連因子が高レベルで発現しているが、発熱細胞においてミトコンドリア呼吸の基質になるNADHの供給が細胞質における解糖経路でいかに供給されているかが大きな問題である。この点については、無益回路に関する酵素活性を測定するためのサンプルの調製方法を検討するとともに、当該回路を構成する遺伝子の構造解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ザゼンソウの群落地における開花や発熱が例年どおりに観察され、関連するサンプリングや解析も概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画どおり、ザゼンソウおよび、国外に自生する発熱植物(Dragon lilyやArumなど)を対象にした解析も並行して進め、複数の発熱植物間における温度センシングの比較ができるようなデータを収集したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ギリシャ・クレタ島に自生している発熱植物の発熱期に群生地を訪れ、必要な解析を行うために使用する。クレタ島に自生する発熱植物の開花は例年3月下旬から観察されるが、実験に最適な訪問時期を見極めた結果、次年度における使用となった。
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