2013 Fiscal Year Annual Research Report
ソース・シンク器官におけるアスコルビン酸プールサイズ制御機構の解明
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24380186
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
石川 孝博 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (60285385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸田 隆典 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (50607439)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アスコルビン酸 / モデル植物 / 生合成調節 / 光調節 / ソース・シンク器官 / タンパク質相互作用 |
Research Abstract |
シロイヌナズナ葉アスコルビン酸(AsA)プールサイズの光制御機構の解明に関して、細胞質と核に局在するVTC2タンパク質の生理的意義とAsA合成との関連を明らかにするため、シロイヌナズナ懸濁培養細胞に加え、恒常発現型プロモーター制御化下でVTC2::GFP融合タンパク質過剰発現植物体のT2ラインの選抜を完了した。予想に反しVTC2::GFP過剰発現体は、組織間における発現レベルに顕著な差異が認められたことから、翻訳後調節の可能性が示唆された。培養細胞と併せGFP蛍光が顕著な子葉を中心にGFP抗体によるプルダウンアッセイを実施し、VTC2相互作用タンパク質候補をいくつか得た。またリン酸化推定部位をAla置換した変異体発現コンストラクトの作製を完了し、シロイヌナズナ野生株およびVTC2欠乏変異体への形質転換を進めている。 AsAプールサイズ制御に関わるリン酸化シグナル経路の解明に関して、ヒメツリガネゴケおよびシロイヌナズナを対象に、タンパク質リン酸化/脱リン酸化への関与が推定されているVTC3について以下の成果を得た。GFPをVTC3遺伝子にノックインしたヒメツリガネゴケにおいて、GFP蛍光の観察結果より、葉緑体への局在が示唆された。さらにVTC3遺伝子発現は、光照射3時間後をピークに一過的な発現制御を受けることが示され、転写および転写後における複雑な制御系の存在が強く示唆された。 トマトおよびシロイヌナズナから見出したガラクツロン酸経路の鍵酵素アルドノラクトナーゼ相同遺伝子について、作製した各組換え体酵素よりラクトナーゼ活性を確認するとともに酵素学的性質を明らかにした。シロイヌナズナに存在する7つのアルドノラクトナーゼオルソログについてプロモーター::GUSによる局在解析により、AL1-2はシンク器官におけるガラクツロン酸経路の機能解明に重要なターゲットであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シロイヌナズナおよびヒメツリガネゴケにおいてVTC2およびVTC3タンパク質とGFPとの融合タンパク質発現体を作製しホモラインを得たが、恒常発現型プロモーターを採用にも関わらず当初の予測に反しGFPの発現レベルや発現組織において偏りが観察され、その要因究明に想定外の時間を割いた。また当該年度に導入されたnanoLC/MSのセットアップおよび解析手段の確立に手間取ったことから、当初計画していたリン酸化プロテオミクスの完了までには至っていない。そのためやや遅れていると自己評価した。しかし、報告書作成した2014年5月時点において、これらの問題はほぼ解決しており、次年度での計画挽回は可能でありプロジェクト全体の計画には影響がないものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見より、GDP-L-ガラクトースフォスフォリラーゼおよびリン酸化/脱リン酸化酵素をコードするVTC2とVTC3の各遺伝子は、植物のソース器官におけるアスコルビン酸(AsA)生合成光調節の中心的役割を担っていることが明白である。したがって、今後本研究を推進する上で解析の最重要事項は、VTC2およびVTC3タンパク質の機能解明である。 VTC2に関してはAsA生合成の場となる細胞質のみならず核にも局在する事実から、進行中のGFP融合タンパク質のプルダウンによる相互作用タンパク質の同定に注力することで両コンパートメントにおけるVTC2タンパク質の生理機能解明に繋げて行く。またVTC2はリン酸化修飾を受けることが示唆されており、このリン酸化とAsA生合成調節との関連解明も鍵となる。すなわち、推定リン酸化部位を適時アミノ酸置換した変異VTC2の解析によりリン酸化部位の同定を推進するとともに、変異VTC2を導入したシロイヌナズナのAsAレベルへの影響等の検討も必要である。 VTC3に関して、同タンパク質が葉緑体に局在する事実から、光情報受容後のシグナル伝達経路の解明に力点を置く。そのためにシロイヌナズナおよびヒメツリガネゴケのVTC3遺伝子株を用いたリン酸化/脱リン酸化ターゲット因子の同定を試みると同時に、VTC2のケースと同様にタグ融合VTC3タンパク質導入植物のプルダウン分析による相互作用タンパク質探索に重点を置いて解析を推進する。 シンク器官におけるAsAプールサイズ制御には、ガラクツロン酸経路が鍵を握っていることを示唆する知見を得ており、アルドノラクトナーゼはその鍵を握ることから重点的に解析を進める。特にシロイヌナズナのシンク特異的発現パターンを示したアルドノラクトナーゼパラログについて、遺伝子破壊株のAsAレベル等解析することでその機能解明を進める方策である。
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[Journal Article] Transient expression analysis revealed the importance of VTC2 expression level in light/dark regulation of ascorbate biosynthesis in Arabidopsis.2014
Author(s)
Yoshimura, K., Nakane, T., Kume S., Shiomi, Y., Maruta, T., Ishikawa, T. and Shigeoka, S.
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Journal Title
Biosci. Biotechnol. Biochem.
Volume: 78
Pages: 60-66
Peer Reviewed
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[Journal Article] Activation of γ-aminobutyrate production by chloroplastic H2O2 is associated with the oxidative stress response.2013
Author(s)
Maruta, T., Ojiri, M., Noshi, M., Tamoi, M., Ishikawa, T. and Shigeoka, S.
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Journal Title
Biosci. Biotechnol. Biochem.
Volume: 77
Pages: 422-425
Peer Reviewed
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