2015 Fiscal Year Annual Research Report
sp3炭素-水素結合変換反応の触媒的キラリティー制御
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24390002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金井 求 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20243264)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 触媒 / 銅 / パラジウム / アミノ化 / エポキシド |
Outline of Annual Research Achievements |
銅触媒を用いて、酸化剤存在下に不活性なアルカン類をイソシアネートによりカーバメート化する方法を開発した。すなわち、5 mol %のカチオン性1価銅塩とビピリジン型配位子との錯体を触媒として、フェニルイソシアネートを窒素官能基源、ジ-t-ブチルパーオキシドを酸化剤としてアルカン類をトリフルオロトルエン溶媒中100度で24時間反応させると、Bocで保護されたアミン類が中程度から高い収率で得られた。本反応は非常に反応性の乏しい鎖状アルカン類に対しても進行し、例えばヘキサンからN-Bocヘキシルアミンが位置異性体の混合物として56%の収率で得られた。位置選択性は低いものの、バルクの炭素資源を触媒的に有用なアミン誘導体に変換できる点で注目に値する。興味深い反応性は得られたものの、不斉誘起までには至っていない。速度論的同位体効果実験から、H12シクロヘキサンとD12シクロヘキサンで3倍の反応速度差が観測されたことから、sp3C-H結合活性化の段階が律速であり、この点が不斉が誘起されない原因の一つであると考えられる。一方で、反応温度を150度まで上昇させて実施するとBoc基の熱分解までワンポットで進行し、アルカン類から無保護のアミンが直接得られた点は合成化学上有用である。 また、配向基を持つ芳香族化合物を基質として、パラジウム触媒による世界初のエポキシド開環反応を見出した。本反応は室温という非常に温和な条件で進行することが特徴であり、他の極性基質への同様な反応に比較して特異的に反応性が高い。エポキシドが酸化剤としてパラジウムを酸化し、これがC-H活性化の特異的に活性な触媒として機能していると仮定している。キラルなエポキシドを基質とすると不斉は完全に保たれる。従って本反応は、医薬等の不斉炭素を有する複雑構造分子の合成にも適用可能であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数のユニークなsp3C-H活性化反応を促進する触媒条件を見出している点は、評価に値すると考えている。特に窒素や酸素といった医薬分子に重要な官能基を安定分子に対して直接的に導入できるため、医薬合成への適用は広い。また、触媒による不斉炭素の立体化学制御という点では、初年度に開発した酸化的ニトロMannich反応で成功している。さらに今年度、基質の不斉炭素を利用したsp2C-H官能基化に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
ラジカル条件によりsp3C-Hを温和な条件で切断する触媒法を見出してきた。これを不斉制御に発展させるためには、活性化した分子を金属触媒の上に乗せる技術の開発が必要である。今後、この点を研究していきたい。すでに興味深い反応性は見出しており、次のプロジェクトでの成功の確率は高いと考えている。
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Causes of Carryover |
有機ラジカルでsp3炭素―水素結合を切断し、炭素ラジカルを生成する方法を見出し、C-Hアミド化反応を開発することが出来た。この合成的に有用な反応の不斉制御をおこなうために、炭素ラジカルを金属触媒でトラップする予備的な方法を見出しつつある。不斉誘起をおこないために重要となりうるこの方法をさらに検討する必要が出てきた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ラジカルと共役した新しい不斉金属錯体の合成と機能検討に使用する予定である。
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