2013 Fiscal Year Annual Research Report
フェノール性水酸基をフッ素陰イオンで求核置換する手法の開発と創薬への応用
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24390005
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤井 周司 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60192457)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フェノール / フッ素陰イオン / ビアリール環 / 含フッ素芳香族化合物 / 抗腫瘍活性 / ベンザイン / カテコール |
Research Abstract |
本申請研究の目的は,合成素子(合成中間体)として,また天然化合物として入手容易なフェノールやポリフェノール類を原料にして,その水酸基を位置選択的にフルオロ基へイプソ置換する方法論を開発することである。具体的には,フェノールおよびカテコールを酸化することで生じる求電子性カルボニル中間体への求核的フルオロ化法(A法)と,フェノールから発生させたベンザインを経る求核的フルオロ化法 (B法)を開発する。 平成24年度にこれら2つの方法論の基礎検討を行い、いずれの方法もその進行を確認することができた。平成25年度は,以下の成果を得た。 1.Allocolchicineやjerusalemine等の強力な抗腫瘍活性を示す天然化合物は架橋ビアリール環構造を共通骨格として有する。A法を基に独自に開発した含フッ素架橋ビフェニル合成法を応用して,本天然物群のC環部にフッ素を置換した各種誘導体を合成した。また,反応条件を変えると,同じ中間体から酸素置換基の位置や数が異なる誘導体も合成できた。これらの化合物のがん細胞増殖阻害活性を評価し,有望な化合物を見出した。現在,この成果の論文発表の準備中である。 2.B法を,1つのベンゼン環内の2ヶ所に三重結合を順次発生させることのできる1,3-ベンズジイン等価体に応用した。さらに,アジドとの(3+2)環化付加反応と求核的フッ素化を順次行って,含フッ素縮合ヘテロ芳香族化合物の合成法を見出した。本法によって,抗精神病薬risperidoneの主骨格を位置選択的に短工程で完成し,創薬基盤研究に資する合成手法を提示した。 3.B法にマイクロフローリアクターを適用して,ベンザインの発生とフッ素化反応を効率的に進行させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初4項目の計画を立てたが、そのうちの3項目はおおむね達成できた。また、残り1課題である天然ポリケチドのデオキシフルオロ体の合成は現在検討中であり、平成26年度も引き続き本課題に取り組み、達成したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題研究では,フェノールおよびカテコールを酸化することで生じる求電子性カルボニル中間体への求核的フルオロ化法(A法)と,フェノールから発生させたベンザインを経る求核的フルオロ化法 (B法)を開発する。 平成24~25年度にこれら2つの方法論の開発,ならびに幾つかの応用検討を行った。この実績に基づき,平成26年度は以下の項目を検討する。 1.上記A法には,フェノールのデオキシフルオロ化や,オルトキノンの反応位置制御に課題が残っている。フェノールやカテコールから酸化的に誘導するヒドラゾンなどを用いることで,これらの問題点の解決を図る。 2.上記B法をポリケチドに応用し,天然ポリケチドのデオキシフルオロ体の合成に取り組む。 3.上記A, Bの方法を応用して生物活性化合物の含フッ素誘導体を合成し,本法の実践性の検証と更なる改良を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度から約90万円の繰り越しがあった。今年度は、薬品や器具を効率的に使用したので当初の予定よりも支出が若干少なくなり、繰越金は総額130万円となった。 翌年度の研究費の主な使途は、研究計画の遂行に必要な薬品と器具の購入、成果発表のための旅費である。
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