2013 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性疾患におけるTRP分子群の病態生理学的役割
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24390016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金子 周司 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60177516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 貴之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30303845)
白川 久志 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (50402798)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | TRPチャネル / カチオン輸送 / 神経変性疾患 / 脳内炎症 / 慢性疼痛 / 慢性膀胱炎 / グリア細胞 |
Research Abstract |
本研究の目的は、神経細胞・グリア細胞・末梢由来免疫担当細胞等で特異的に発現するTRPチャネル分子群等に焦点をあわせ、各種疾患へどのように関与するかを明らかにすることにある。本年度は主な知見として以下の結果を得て、学会・原著論文等で発表した。 1, ミクログリアに発現するカチオンチャネルとして、活性酸素感受性のCa2+透過型チャネルであるTRPM2に焦点を当て検討した。その結果、ミクログリアにおけるLPSおよびIFN-gamma誘発誘導型NO合成酵素発現増大のメカニズムとして、NADPHオキシダーゼ活性化を介したTRPM2の開口、その後のCa2+流入によるPyk2の活性化、そしてp38およびJNK活性化を介した特異的なシグナル伝達経路があることが明らかになった。 2, 申請者らはこれまでに、マクロファージおよびミクログリアに発現するTRPM2活性化を介した炎症性メディエーターの産生・遊離が神経障害性疼痛を特異的に媒介していることを報告してきた。そこでTRPM2の骨髄キメラマウスを作製し、更なるメカニズム解析を行った結果、TRPM2は神経損傷初期では好中球の浸潤を介した末梢神経感作に寄与し、慢性期では脊髄への骨髄由来マクロファージの浸潤を介した末梢神経感作に寄与することで、神経障害性疼痛に寄与していることが明らかとなった。 3, 申請者らはこれまでに、大腸がん治療薬であるオキサリプラチン(OHP)による急性冷過敏応答が、TRPA1の選択的機能増強に起因することを報告してきた。そこでOHPによる詳細なメカニズムについて検討した結果、低濃度のOHPはROSに対するTRPA1の感受性を増大し特異的な急性末梢神経障害を惹起すること、高濃度のOHPは直接TRPA1に作用しROSの産生を引き起こしてTRPA1を活性化させることが明らかになった。詳細なメカニズムについては更なる検討を要する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象疾患のin vivoモデルの作出に関して一部において難点があり、若干の計画変更を認めているが、対象疾患範囲を拡大することで、学会および原著論文にて発表することができる成果を当初の計画に即した概念に基づいて得ることが出来、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、神経細胞・グリア細胞・末梢由来免疫担当細胞等で特異的に発現するTRPチャネル分子群に焦点をあわせ、一部範囲を拡大した対象疾患の病態においてどのような関与を及ぼすかについて検討を進めていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
過年度において、対象疾患のin vivoモデルの作出に関して一部において難点があり、若干スケジュールを組み直した。そのため、一部の研究遂行に関して遅延を認めたため、次年度使用額が生じた。 予備検討の結果を踏まえ、十分な成果を得ることができると想定されるため、計画通りに研究を遂行していく予定である。
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