2014 Fiscal Year Annual Research Report
亜鉛輸送体の発現調節による内皮細胞機能制御とその異常に基づく重金属の毒性発現
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24390034
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鍜冶 利幸 東京理科大学, 薬学部, 教授 (90204388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 千夏 東邦大学, 薬学部, 教授 (70230571)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 亜鉛輸送体 / カドミウム / 亜鉛 / 血管内皮細胞 / メタロチオネイン |
Outline of Annual Research Achievements |
カドミウムの細胞毒性に対して必須微量元素である亜鉛が防御作用を示すことが広く知られているが,その防御機構は亜鉛によって誘導されたメタロチオネイン(MT)にカドミウムが捕捉され無毒化された結果であることが定説となってきた。しかしながら,内皮細胞においては亜鉛のMTの誘導能はきわめて低い。我々は亜鉛がカドミウムの細胞内蓄積量を減少させる“希釈効果”を示したが,そのメカニズムは不明であった。近年,細胞内へのカドミウム輸送が亜鉛輸送体(ZIP8およびZIP14)によって行われることが明らかになった。そこで,カドミウムと亜鉛の相互作用における金属輸送体およびMTの誘導を調べた。その結果,血管内皮細胞に対するカドミウムと亜鉛の相互作用は,1)亜鉛による亜鉛輸送体ZIP8の発現抑制が,細胞内におけるカドミウムの希釈効果に関与していること,2)亜鉛によるカドミウムの内皮細胞毒性の防御作用は亜鉛の濃度に依存し,低濃度亜鉛ではZIP8の発現抑制によるカドミウムの取り込み抑制が重要であり,一方,高濃度亜鉛ではZIP8の発現抑制に起因する細胞内カドミウムの蓄積減少だけでなく,MTの誘導が関与していること,3)カドミウムと高濃度亜鉛との相互作用では主としてMTF-1/MRE経路を介したMT-2の誘導が関与していること,を示唆していた。本研究により,血管内皮細胞に対するカドミウムと亜鉛の相互作用において,従来の定説であったMTによる防御機構の詳細が明らかになっただけでなく,希釈効果にZIP8の発現に対するカドミウムと亜鉛の相互作用が関与することが明らかとなった。亜鉛が低濃度のときはZIP8発現が重要であり,高濃度のときはZIP8発現とMT誘導の両方が機能することも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度にカドミウムおよび線維芽細胞増殖因子-2が ZIP-8の発現を上昇させることを見つけ,平成25年度にはそのMAPK経路がその誘導を介在していることを明らかにした。その成果をもとに平成26年度は血管内皮細胞において,最も典型的な重金属相互作用の1つであるカドミウムと亜鉛の相互作用に,亜鉛輸送体ZIP8が関与することを明らかにすることができた。これは従来の「カドミウム-亜鉛相互作用は亜鉛によって誘導されたメタロチオネインにカドミウムが捕捉され無毒化された結果として起こる」定説に新たな視点を提供するものである。同時に「亜鉛が低濃度のときはZIP8発現が重要であり,高濃度のときはZIP8発現とMT誘導の両方が機能すること」も明らかにしたことは,カドミウム-亜鉛相互作用におけるZIP8の関与が血管内皮細胞に限定されない可能性を示唆するものであり,すでに決着がついたかに思われているカドミウム-亜鉛相互作用のメカニズムの詳細に不明な点が残されていることを示唆するものである。以上のように,今年度は金属毒性学を着実に前進させる成果を得ており,研究の進展は概ね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって重金属や細胞増殖因子が亜鉛輸送体の発現を調節し得ることが分かり,それが重金属相互作用などによる細胞毒性の問題に深く関わっていることが示された。先に線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)が亜鉛輸送体の発現を調節する因子の1つであることが分かったので,次に血管内皮細胞に対する機能調節を行うサイトカイン-トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)について検討する。すなわち,内皮細胞増殖は FGF-2によって促進されるのに対しTGF-βによって強く抑制されるなど,FGF-2とTGF-βは内皮細胞の機能調節について拮抗的な役割を果たしていると考えられている。ウシ大動脈由来血管内皮細胞をTGF-β1,抗TGF-β1中和抗体,その両方を処理した細胞のtotal RNAを抽出し,亜鉛輸送体 (ZIP1~14, ZnT1およびDMT1) のmRNA発現をreal-time RT-PCR法によって検討する。リポフェクション法によってALK1, ALK5, Smad2, Smad3のsiRNAを導入,もしくはLY364947 (ALK5阻害剤),PD98059 (ERK阻害剤),SB203580 (p38 MAPK阻害剤) , SP600125 (JNK阻害剤) を前処理し,その後TGF-β1を処理した細胞のZIP8 mRNA発現をreal-time RT-PCR法にて検討する。 ZIP8タンパク質の発現,Smad2/3およびMAPKシグナルの活性化は,ウエスタンブロット法により検出する。以上によりTGF-βによる内皮細胞の亜鉛輸送体発現の調節とそのシグナルを明らかにし,さらに内皮細胞機能調節との関連を検討する。
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Causes of Carryover |
一部の試薬が予定よりも廉価で購入できたため,8万円余が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費の一部として活用する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] The cytotoxicity of organobismuth compounds with certain molecular structures can be diminished by replacing the bismuth atom with an antimony atom in the molecules2015
Author(s)
Kohri, K., Yoshida, E., Yasuike, S., Fujie, T., Yamamoto, C., Kaji, T.
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Journal Title
Journal of Toxicological Sciences
Volume: 40
Pages: 321-327
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Comparative cytotoxicity of triphenylstibane and fluorine-substituted triarylpnictogens in cultured vascular endothelial cells2015
Author(s)
Murakami, M., Fujie, T., Matsumura, M., Yoshida, E., Yamamoto, C., Fujiwara, Y., Yasuike, S., Kaji, T.
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Journal Title
Fundamental Toxicological Sciences
Volume: 2
Pages: 61-66
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Glutathione-mediated reversibility of covalent modification of ubiquitin carboxyl-terminal hydrolase L1 by 1,2-naphthoquinone through Cys152, but not Lys42014
Author(s)
Toyama, T., Shinkai, Y., Yazawa, A., Kakehashi, H., Kaji, T., Kumagai, Y.
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Journal Title
Chemico-Biological Interactions
Volume: 214
Pages: 41-48
DOI
Peer Reviewed
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