2012 Fiscal Year Annual Research Report
Shiga toxin2による腸管出血生大腸菌感染症重篤化の分子機構の解明
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24390035
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
西川 喜代孝 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (40218128)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 感染症 / 腸管出血性大腸菌 / Shiga toxin / 小胞輸送 / 糖脂質 |
Research Abstract |
腸管出血生大腸菌が産生するStxにはStx1,Stx2の2つのファミリーが知られているが、Stx2の方が臨床的にも疫学的にも症状の重篤化と密接に関係している。しかしながら、その強毒性発現機構については全く明らかにされていない。これまでに我々は、標的細胞内でのStx2の小胞輸送にはStx1にはない特徴的な経路が存在していること、その結果Stx2のみが活性型Stx2となって効率よく細胞外に放出されること、さらにマウスにStx2を静脈投与すると活性型Stx2が血中に検出できること、を見出した。本研究では、このStx2に特徴的な小胞輸送の分子機構を明らかにし、さらにこの現象が生体内でのStx2の強毒性発現にどのように関与しているかを解明する。 1.Stx1ならびにStx2のハイブリッドStxを用いた検討 我々はすでに、Stx1とStx2とでは、両者の受容体認識に利用されるグロボ3糖結合部位が異なっていることを見出している。この相違がStx2に特徴的な経路に直接関与しているか否か、について検討するためStx1ならびにStx2のA-,Bサブユニットそれぞれを入れ替えたハイブリッドStxを作製した。得られたハイブリッドStxを用いて細胞内輸送を検討した結果、A-サブユニットのタイプに関わらず、Stx2のB-サブユニットを持っていれば活性型Stxの細胞外への遊離が起こること、すなわちStx2のB-サブユニットによって本経路が規定されていることを見出した。 2.多価型ペプチドライブラリー法を用いたStx2のグロボ3糖結合部位特異的阻害分子の同定 我々が独自に開発した多価型ペプチドライブラリーならびに多価型ペプチドシート合成技術(特願2010-019731)を用い、Stx2B-サブユニットの各種グロボ3糖結合部位を標的として、部位特異的結合モチーフを順次取得している。現存までに、10種以上を同定しており、毒性阻害活性、細胞内輸送への効果について評価を推進している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度に計画申請書に記載した2つの項目について、1)Stx1ならびにStx2のハイブリッドStxを用いた検討、については目的を達成しており、特にStx2のB-サブユニットによって発生する細胞内情報伝達機構を解明すればStx2特徴的な輸送経路の解明につながるという方向性を明確にすることができた。2)多価型ペプチドライブラリー法を用いたStx2のグロボ3糖結合部位特異的阻害分子の同定、については予定通りに進行している。来年度に向け、得られた候補ペプチドの評価を行なってゆくという方向性を明確にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1Stx2のB-サブユニットによって発生する細胞内情報伝達機構の解明 Stx2に特徴的な輸送経路を規定しているのはそのB-サブユニットである、との今回の知見に基づき、その下流のシグナル分子について活性化状況を詳細に検討し、輸送制御機構を分子レベルで解明してゆく。 2Stx2の輸送を制御する新規ペプチド性分子の開発 これまでに同定することができたStx2B-サブユニット結合性ペプチド分子について、Stx2の細胞内輸送への効果、Stx2によって発生するシグナル伝達機構への効果、を総合的に評価し、Stx2特徴的細胞内輸送制御分子として確立してゆく。同時に新たなStx2B-サブユニット結合モチーフの検索も推進してゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の計画は順調に進展しており、Stxのサブタイプによる細胞内輸送の相違が各々のB-サブユニットによって決定されていることを明らかにすることができた。そこで、各々の輸送機構を解明するためには、各B-サブユニットが結合した直後の細胞内情報伝達機構を詳細に調べる必要が生じた。そのためには、Intabis AG社のCellSpots合成装置の導入が必須であると判断した。なぜなら本装置によって、細胞内情報伝達をになう数百種のprotein kinaseの基質ペプチドをスライドガラス上に合成することが可能であり、このスライドガラスをB-サブユニット刺激後のライセートでin vitro kin aseassayを行なうことによって、これらkinaseの活性化状態を網羅的に解析することが可能となるからである。そこで、24年度使用予定の助成金から1,309,739円を本装置の購入費用にあてることとした。本装置の導入によって、25年度に細胞内情報伝達機構の解明が一層効率よく推進できると期待されることから、本措置による研究推進への影響はないと判断される。
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