2013 Fiscal Year Annual Research Report
Shiga toxin2による腸管出血生大腸菌感染症重篤化の分子機構の解明
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24390035
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
西川 喜代孝 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (40218128)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 感染症 / 腸管出血性大腸菌 / Shiga toxin / 小胞輸送 / 細胞内情報伝達 / ペプチド |
Research Abstract |
1. Stx1ならびにStx2のB-サブユニットのシグナル伝達機構の解明 本年度では、Stx1ならびにStx2のB-サブユニットそれぞれについて、受容体に結合後その下流の各種シグナル分子の活性化を詳細に検討した。その結果、まずStx1Bサブユニットについては、ERK, p38の活性化、NFkB経路の活性化を引き起こしていること、さらにこれらシグナルの下流であるMIP1b, IL8, TNFaの発現誘導を起こしていることが明らかとなった。また、Stx2Bサブユニットについては、現時点でERK, p38の活性化を同様に引き起こしていることを明らかにしている。さらに、Intabis AG社のCellSpots 合成装置を用いて合成した各種portein kinase特異的基質を特定の基材にスポットしたものを用いて、各種portein kinaseの活性化状態を網羅的に調べている。これまでにスポット合成の条件を確立し、高いS/N比でシグナルを検出する系が構築できている。 2. Stxのグロボ3糖結合部位特異的阻害分子を用いた検討 これまでに開発してきたペプチド性Stx阻害分子を用い、上記Stx1ならびにStx2によって発生するシグナルに対する効果を検討した。その結果、2種のペプチド性Stx阻害分子を用いることにより、Stx1ならびにStx2では毒性発現に関わるシグナルが異なっている可能性を示すことができた。特にStx2の毒性発現にはp38が密接に関与していることを示すことができた。現在、この2種のペプチド性Stx阻害分子をプローブとして用い、両Stxの細胞内輸送への効果、さらに毒性発現に関与していると考えられる細胞外への遊離に対する効果を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度に計画申請書に記載した、1)Stx1ならびにStx2のB-サブユニットのシグナル伝達機構の解明、についてはサイトカイン産生に対する評価を進展させることができ、計画を上回る成果があった。一方、Stx2Bに対する評価が若干遅れている。また、CellSpots 合成については、数百のペプチドを効率よく、かつ再現性高く合成できる系を確立できた。一方で、ブロットの際のS/N比の向上させる条件の確立に手間取ったが、ほぼ解決できたと思われる。2)Stxのグロボ3糖結合部位特異的阻害分子を用いた検討については、まずプローブの絞り込みが達成できたことが評価できる。1)での成果と組み合わせることで、精度の高いStx2特異的な輸送の機構が解明できる可能性が高まった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. Stx1ならびにStx2のB-サブユニットのシグナル伝達機構の解明:Stx1ならびにStx2の、受容体結合後のシグナルについて、CellSpots 合成装置を用いて各種portein kinaseの活性化状態を網羅的に調べる。 2. Stx1ならびにStx2の細胞内輸送に関わる分子機構の解明:現在、small-G-proteinの1種であるRabファミリーが様々な小胞輸送の段階に関与していることが知られており、その中でもRab11はとくに小胞のリサイクリング経路に関与しているといわれている。そこで、Stx1とStx2の細胞内輸送におけるRab11の関与について検討を行う。具体的には、RNA干渉法によってRab11の2種のサブタイプ、Rab11aとRab11bをそれぞれノックダウンさせたVero cellを用い、細胞外へとリリースされたStxを定量する。Rab11以外に、特にリサイクリング経路に関与しているRab7、Rab27A等についても同様の検討を行い、Stx2の細胞外への放出に密接に関係する因子を同定する。 3. 細胞外に放出されるStx2の存在形態の解明:Stx2は活性型となって細胞外に放出されるが、この遊離されたStx2の毒性、形態に関して詳細に検討する。特に個体でのStx1と2の毒性の顕著な相違に、この細胞外に遊離されてくるStx2が関与しているのであれば、この点に関する詳細な検討は本研究の重要な部分を構成する。具体的には、まず細胞から遊離されるStx2を含む細胞培養上清を回収し、vero細胞に対する毒性試験、マウス個体に対する毒性試験を検討する。さらにこの上清をゲル濾過にかけ、このStx2の形態について詳細に検討し、exosomeのような構造体を構成している可能性について調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は430円であり、年度末の時点で本研究遂行に必要な試薬の購入金額の最低限度を下回っており、次年度分と合算して使用したほうが、必要試薬を有効に購入できると判断されたため。 次年度分と合算し必要試薬の購入にあてる。
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