2014 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内脂質性情報伝達制御因子の生体機能:微細局在と細胞応答から学習行動解析まで
Project/Area Number |
24390044
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 知之 山形大学, 医学部, 助教 (00333948)
八月朔日 泰和 山形大学, 医学部, 准教授 (00372334)
田中 俊昭 山形大学, 医学部, 助教 (70536987)
藤井 聡 山形大学, 医学部, 教授 (80173384)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 炎症応答 / 小胞体 / ストレス / 核 / リン脂質代謝 / 細胞内局在 / プルキンエ細胞 / 免疫電顕 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体膜脂質の微量成分であるイノシトールリン脂質の代謝過程において産生されるジアシルグリセロール(DG)は、細胞内二次メッセンジャーとして作用することが知られている。これまでDGはプロテインキナーゼCの活性化因子として注目され、DG-PKC経路の過剰活性化と発癌メカニズムの関連性について報告されてきたが、一方でDGは様々な脂質代謝経路の主要な中間産物であり、また生体貯蔵エネルギーのトリグリセリド(TG)の前駆体であることも事実である。DGキナーゼ(DGK)によるDGのリン酸化は、全細胞に普遍的に存在する酵素反応であるが、この酵素反応の機能的意義には未だ解明されていない点が多い。 本年度は、DGKアイソザイムのうち、DGKζおよびDGKεの機能解析を中心に行った。DGKζをノックダウンしたHeLa細胞およびDGKζ-KOマウス由来のマウス胎児線維芽細胞(MEF)を用いて、炎症性サイトカインTNFαおよびIL-1βの刺激によるNFkB-p65サブユニットの細胞内局在を共焦点レーザー顕微鏡により経時的に観察したところ、これらの刺激によってp65がコントロールと比較して迅速に細胞質から核内に移行し、核内での滞在時間も遷延することが判明した。またp65の核内滞在時間の延長に一致してNFkB転写活性も亢進した。これらの結果より、DGKζは炎症応答においてNFkB経路に抑制的に作用する可能性が示唆された。一方、免疫金コロイド電顕解析により、DGKεは小脳プルキンエ細胞の樹状突起形質膜直下の滑面小胞体に検出され、IP3受容体との共局在が示された。アミノ酸置換実験により、アミノ末端近傍のαへリックス構造内の3つのロイシン残基(Leu22、Leu25、Leu29)からなる疎水性パッチが、小胞体への局在化に重要な役割を果たすことが明らかとなった。またDGKεのノックダウンにより、小胞体ストレスに対する脆弱性が亢進することから、DGKεは小胞体ストレス応答機能に関与することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DGKの生体機能に関して、微細局在と細胞応答、さらには個体レベルの解析を目標として研究を行っているが、今年度の研究により、DGKζ-KOマウスを用いた放射線照射モデルにおけるデータが得られつつある。また、炎症応答におけるDGKζの役割に関して、このアイソザイムがNFkB経路におけるp65分子の活性化に抑制的に作用することを明らかにして報告することができた。また、DGKεに関しては、電子顕微鏡レベルの解析を行い、分子生物学的手法を用いて、小胞体への局在化ドメインを明らかにし報告した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで得られて実験データをさらに詳細に検証し、DGK各アイソザイムの細胞レベル、個体レベルの研究を推進する。具体的には、DGKζによる細胞周期およびアポトーシス制御機能の解明、DGKεによる高次脳機能への関与および小胞体機能における役割を追求する。
|
Causes of Carryover |
DGK-KOマウスの個体数が不足し、追加実験に必要な匹数を確保することが困難となり、実験に遅れが生じているため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験データを確認しながら、個体数と統計学的有意性を適確に見極めながら実験を進める予定である。
|
Research Products
(10 results)