2012 Fiscal Year Annual Research Report
視床下部オレキシンを標的とした情動と糖代謝の連動的制御による糖尿病治療法の開発
Project/Area Number |
24390056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
笹岡 利安 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 教授 (00272906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
恒枝 宏史 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20332661)
和田 努 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 助教 (00419334)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オレキシン / インスリン抵抗性 / 肝糖新生 / ERストレス / ストレス / 日内リズム / 時計遺伝子 / うつ |
Research Abstract |
情動の変化は糖代謝に影響を及ぼすが、そのメカニズムは不明である。本研究では、情動系と中枢性糖代謝調節の両者に関与する視床下部オレキシン神経系に注目し、情動の変化に関わるオレキシン神経系が、自律神経バランスや日内リズム調節を介して糖代謝に影響を及ぼすメカニズムを探究した。体内時計の調節機構における内因性オレキシンの役割を明らかにするため、糖代謝に重要な肝臓を摘出し、時計遺伝子とその支配遺伝子のmRNA発現量をRT-PCR法にて測定した。オレキシンの欠損が発現リズムに与える影響を検討すると、オレキシン欠損(OX-KO)マウスでは時計遺伝子群の中でPer2の発現が暗期に低下していた。対照のC57BL/6JマウスをOX-KOマウスと同程度にカロリー制限したところ、Per2の発現は減少せず、逆に増加したことから、本変化は摂食量と独立して生じていると考えられる。さらに、PPary, PGClα Namptなどの時計制御遺伝子の発現も、OX-KOマウスの肝臓では、暗期において異常を示した。本リズム異常と関連して、OX-KOマウスでは暗期においても血糖の変動が認められず、明期の血糖値が野生型マウスよりも高値を示した。インスリンやコルチコステロンには異常はないことから、これらが明期の高血糖の原因ではないことが示された。加齢に伴いOX-KOマウスでは肝糖新生の亢進によるインスリン抵抗性を認めることから、本異常のメカニズムとして小胞体(ER)ストレスの関与を検討した。マウスを24時間絶食した後、1時間再摂食させる小胞体ストレス負荷を行うと、OX-KOマウスでは小胞体タンパクのinositol requiring element-1 (IRE1)αの過剰な活性化と、それに伴うc-jun N-terminal kinase (JNK)の過剰なリン酸化が誘発され、ER恒常性の異常を認めた。以上より、本年度の研究において、オレキシンの欠損により、体内時計の日内リズム異常を呈し、加齢に伴いERストレス応答が破綻することで、肝インスリン抵抗性と糖代謝異常を呈することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視床下部のオレキシン神経は、睡眠と覚醒の制御に加え、自律神経やエネルギーバランスの調節に重要な役割を果たしている。加齢によりオレキシン発現量が減少し、耐糖能異常を呈するメカニズムを解明するための平成24年度の計画につき、オレキシン欠損による糖代謝の日内リズム異常として時計関連遺伝子の発現異常と、ERストレス応答の異常による肝糖新生亢進を明らかにすることができ、おおむねその目標を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、慢性ストレスが視床下部オレキシンによる糖代謝異常を破綻させるメカニズムの解析を推進する。平成24年度の研究成果に基づき、オレキシン欠損によりストレス負荷後のインスリン抵抗性が増加する機序と、カロリー制限に伴うオレキシン神経系の活性化が抗うつ作用とインスリン抵抗性の改善に及ぼす影響を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費次年度使用に関しては、平成24年度の研究目的が順調に達成でき、次年度以後の経費のために努力して節約して実施できたため、平成25年度の研究で合わせて使用する。慢性ストレス負荷マウスの研究実施に際して、多額の動物購入・飼育費が必要となるため、本経費として主に使用することを計画している。平成25年度は、補助事業に要する経費として、合わせて5,246,365円を物品費の内消耗品費として使用する。その明細は、動物購入・飼育費、遺伝子用解析試薬、タンパク解析用試薬、投与薬物費、細胞培養用試薬、一般試薬である。また、印刷費として50,000円を使用予定である。
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Research Products
(7 results)