2013 Fiscal Year Annual Research Report
自己免疫を抑制するリンパ組織微小環境成立の分子機構
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24390071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋山 泰身 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (50327665)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リンパ組織 / 自己免疫 / T細胞 / サイトカインシグナル |
Research Abstract |
自己免疫を抑制するために個体は様々な機構を持つ。それらを制御する分子機構は免疫学に限らず癌の発生など基礎医学一般において解明すべき重要な課題といえる。胸腺は、T細胞の分化の場となる組織であるが、同時に、自己抗原に応答するT細胞の除去、そして末梢組織で免疫応答を抑制するT細胞の分化を誘導することで、自己免疫疾患の発症抑制にも重要である。一方、免疫応答を抑制するFoxp3陽性制御性T細胞(以下制御性T細胞)は、自己免疫疾患の治療などへ応用が期待されている。制御性T細胞の多くが胸腺で分化するが、その際に必要な胸腺“環境”形成の分子基盤について不明な点が多く、その解明は制御性T細胞を人為的に分化誘導する方法を開発する上で急務の課題となっている。本研究課題では特にTNFレセプターファミリーのRANKシグナルに着目し、制御性T細胞に必要な環境形成におけるRANKシグナルの役割解明を目指している。 昨年度までにRANKシグナルが同じTNFレセプターファミリーのCD40シグナルと協調することで制御性T細胞の分化を誘導すること、RANKとCD40シグナルが不全なマウスの胸腺細胞には自己応答性T細胞が産生することを明らかとした。しかし、RANK欠損マウス単独では、胸腺の制御性T細胞の分化に変化が起こらない。そこで本年度は、RANKシグナルが制御性T細胞の分化に関わることをさらに確定するために、RANKシグナルを阻害するデコイレセプターOPGを欠損するマウスを解析し、RANKシグナルが過剰な状況における制御性T細胞の分化について検討した。その結果、胸腺ストローマで発現するOPGが胸腺内制御性T細胞の分化を抑制していることが明らかとなった。今後は、胸腺内のどの細胞でRANKシグナルが機能することで、制御性T細胞の分化を制御しているのか確定するとともに、その分子機構について検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RANKシグナルが胸腺の制御性T細胞の分化に必要であることが確定できたが、RANKを発現する胸腺内細胞が予想以上に少数であり、その単離に困難を極めている。そのため、RANKシグナルを介して胸腺内制御性T細胞を分化誘導する分子機構の同定に関する計画に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
RANK発現細胞がかなり少数のため、まず胸腺ストローマにおけるRANKシグナルあるいは造血幹細胞におけるRANKシグナルの、どちらが重要であるのか、移植実験により明確にすることで、単離を目指す細胞を一種類に絞る。その後、採取するために要するマウスを多数準備し、磁気ビーズとセルソーターを利用してRANKを発現した細胞の採取を目指し、分子機構を調べる実験に供する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
RANKを発現し、制御性T細胞の分化を制御する胸腺内環境形成細胞が2種類以上存在すること、また予想以上に少数であり、その単離に困難が生じた。そのため、RANKシグナルを介して胸腺内制御性T細胞を分化誘導する分子機構の同定に関する計画に遅れが生じ、次年度での使用が必要となった。 2種類の胸腺内環境形成細胞のどちらが制御性T細胞の分化を制御するのか、同定することで候補を絞り、可能な限り多くの細胞の単離を試行する。ついで分子機構の同定を目指して解析を行うための費用として使用する予定である。
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