2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24390096
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 泰広 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (70313872)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞分化 / がん / エピジェネティクス / iPS細胞 |
Research Abstract |
ドキシサイクリンによる遺伝子発現系を利用して細胞初期化因子を発現コントロールできる初期化可能マウスを作製した。初期化可能マウスにドキシサイクリンを約4週間投与すると、様々な臓器に腫瘤形成が認められた。それらは多能性幹細胞を含む奇形腫であり、生体マウス内でiPS細胞を作製することに成功した。生体内細胞脱分化モデルを作製することができた。次に、生体内での細胞初期化を途中で停止させ、脱分化細胞の病理組織学的解析および分子生物学的解析を行った。生体内初期化を途中で中止したところ、奇形腫とは異なる未分化細胞の増生からなる腫瘍の形成を引き起こすことが分かった。不完全な細胞初期化における腫瘍は、組織学的特徴や遺伝子発現パターンが小児がんに類似することが分かった。DNAメチル化状態を検討すると、それらの腫瘍細胞では多能性幹細胞と部分的に類似したDNAメチル化パターンを示すことが明らかとなった。一方で、腫瘍細胞では、多能性幹細胞におけるポリコーム標的遺伝子が抑制されていなかった。多能性獲得に向かう不完全なエピゲノムの改変が小児がん類似病変の形成、維持に関与していることが示唆された。脱分化により生じたがん細胞は、再度、細胞初期化因子を再発現させることで、完全に初期化され、iPS細胞を樹立することができた。樹立されたがん細胞由来iPS細胞を用いて、胚盤胞へのマイクロインジェクションを行い、偽妊娠マウス子宮に移植することでキメラマウス作製を試みた。興味深いことに、がん細胞由来iPS細胞から非腫瘍性の細胞からなるキメラマウスを作製可能であることが確認された。本研究の成果は、細胞脱分化と小児がん発生の共通性を明らかにするとともに、エピゲノム異常による発がん機構の存在を示唆するもので、エピゲノム制御を標的とするがん治療の可能性を提示するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
細胞脱分化による発がんモデルを作製することに成功し、その分子メカニズムの一部を解明することができた。結果を一流紙に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、細胞脱分化による発がんモデルの解析を継続し、細胞分化維持機構の破綻が如何に発がんに至るのかを明らかとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子発現解析およびエピゲノム解析を次年度に持ち越したため。 次世代シークエンサー用試薬を購入し、網羅的な遺伝子発現解析およびエピゲノム解析を行う。
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Research Products
(4 results)