2012 Fiscal Year Annual Research Report
無細胞蛋白質合成技術を活用した抗HIV分子標的治療薬の創出
Project/Area Number |
24390115
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
梁 明秀 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (20363814)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ウイルス / 蛋白質 / プロテオーム / 酵素 / バイオテクノロジー |
Research Abstract |
HIV感染症の根本的な克服には、宿主-ウイルス相互作用に基づいたウイルス増殖機構や病原性発現メカニズムを解明し、それらのエビデンスに基づいた薬剤標的設定を行うことが必要である。本研究課題では我々が独自に開発した無細胞タンパク質合成技術を駆使し、HIVタンパク質と内因性抗レトロウイルス宿主因子との相互作用をピンポイントに阻害する新規の分子や阻害剤の同定を目指した研究を行った。初年度は無細胞タンパク質合成系を用いた宿主-ウイルスタンパク質複合体の再構成と、それらの相互作用アッセイ系の構築を行った。まず、無細胞タンパク質合成技術を用いて、APOBEC3G,Tetherin/BST2,SAMHD1などの宿主抗ウイルス因子を合成した。また、アルファスクリーンを用いて、宿主抗ウイルス因子とそれらの拮抗因子であるウイルスタンパク質(Vif,Vpu,Vpx)との相互作用を基盤とした、高感度でハイスループットな相互作用アッセイ系を構築した。アッセイ系の具体的な原理としては、(1)Flagタグを融合したウイルスタンパク質と、biotin化標識をした宿主因子をそれぞれ合成し、(2)各タンパク質と宿主性因子または化合物を混和後、アルファスクリーンを用いてエネルギー転移による相互作用シグナルを検出することで、相互作用を阻害する因子または化合物を同定した。本年の成果として、ストレス誘導型タンパク質リン酸化酵素群が、核酸系の逆転写酵素阻害剤により誘導され、vif-APOBEC3Gの相互作用を顕著に阻害することを見いだした。これらの生理的意義について、T細胞株であるJurkat,CEM,CEM-SS細胞を用いて確認したところ、当該因子の作用によりウイルス粒子中のAPOBEC3Gの取り込みの増加とウイルス粒子の感染性低下が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無細胞タンパク質合成系を用いて、HIVアクセサリータンパク質と宿主抑制因子の全長タンパク質の合成および精製に成功している。また、アルファスクリーンを利用した相互作用アッセイも構築済みである。本アッセイ系を用いて、ウイルス複製を阻害する因子がいくつか同定された。今後はこれらの候補タンパク質の機能解析を中心に、新たな抗ウイルス因子や阻害化合物を探索する。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に同定された候補因子の機能解析を中心に進めていくとともに、新たな阻害因子や阻害物質の探索を進めていく。また、ウイルス感染細胞を用いた解析を実施することで、当該因子がHIV増殖や病原性発現にどのように関与するかについて詳細に検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ウイルス感染の研究において使用する試薬を安価に購入できたため、繰り越し金が生じた。 翌年度のウイルス感染実験において試薬購入にあてる予定である。
|